【論説】県内水道の耐震化 急げ浄水場、老朽管の改修

能登半島地震の被災地では今も断水が一部で続いている。老朽化した水道管が各地で破損し、復旧作業が追い付かないためだ。これは東日本大震災(2011年)で全国最悪の断水を記録した本県にとって人ごとではない。県内浄水場の耐震化率は全国平均を大きく下回り、水道管の耐震化も伸び悩む。揺れの大きな地震が全国的に相次いでいる。震災時の長期断水の再来を防ぐためにも水道施設の耐震改修を急ぐ必要がある。

能登半島地震後、震源地の石川県では最大約11万戸が断水に見舞われた。発生から3カ月を経た4月1日になっても珠洲市など5市町の一部ではなお断水が続く。水道管の耐震化の遅れも長期断水の要因の一つとみられている。

本県も東日本大震災では長期断水の痛手を受けた。東日本大震災の際、断水被害は全国19都道県の約250万戸に広がったが、このうち本県の断水は全国最多の80万1018戸に上り、県内44市町村のうち計39市町村で発生。県全体の水道供給対象の80・5%に及んだ。県内大半の浄水場・取水施設が被災し、水道管も各地で破損したためだ。水道の復旧までには県全体で平均13日を要し、地盤が液状化した神栖市では復旧するのに約2カ月かかった。

これを踏まえ、県企業局や一部市町村は水道施設の耐震改修に乗り出したが、耐震化は県全体としては進んでいるとは言えない。

厚生労働省の2022年3月末現在の調査によると、浄水施設の耐震化率は全国平均39・2%に対し県内平均は20・5%と全国水準の約半分。県内の主な水道管(基幹管路)のうち耐震性があると認められた水道管の延長は全体の45・3%(耐震適合率)。ただ、耐震適合率は市町村によって異なり、阿見町や東海村では100%なのに対し常陸大宮市や下妻市、河内町、八千代町では0%。

水道事業は主に市町村の独立採算で運営されている。人口減少などで料金収入が先細る中、浄水施設の耐震改修や老朽管の耐震管への更新は水道料金の引き上げに跳ね返りかねない。先月には大洗町で水道が町内全域で断水したり水が濁ったりするトラブルがあったが、原因は水道管の老朽化だった。老朽管の更新、水道施設の耐震改修がなかなか進まないのはコストや財政面の懸念があるためだ。

ただ、災害時の長期断水は被災住民の生活再建を妨げるだけではない。外部から被災地に入る作業員やボランティアらも現地に足場を築けず、結果として復旧作業の足かせにもなる。

震災時の長期断水を防ぐ耐震改修には水道事業の効率化が欠かせない。県内には現在、市町村と県企業局合わせて123の浄水場が設置されているが、今後多くが老朽化による更新期を迎える。整備費を抑えるためにも浄水場を広域的に再編統合し、それに併せて耐震改修するのが合理的だろう。また、本年度から水道事業の所管は厚労省から国土交通省に移った。国交省所管の下水道事業と一体で広域整備するなどの工夫でコストを圧縮する方法もあろう。

本県もいつまた大震災に襲われるか分からない。水道の全体的な耐震化が難しいとすれば、まずは災害時の避難先となる学校や公民館、病院周辺を優先して水道管改修を急ぐ必要があろう。各家庭でも震災時の断水を想定し、飲料水や生活用水の備蓄に努めたい。