【論説】自治体4割消滅可能性 将来像のデザインを

経済界有志による民間組織「人口戦略会議」が、2050年までの地方自治体の持続可能性を分析した報告書を発表した。若い女性の減少に伴い人口が大幅に減る「消滅可能性」自治体は全体の40%超、744とした。

10年前、「日本創成会議」が出した自治体数は896だった。評価方法などが少し違うため単純比較はできないが、数字上は改善している。その大きな要因が外国人住民の増加とされており、日本人の減少は深刻なままだと言える。

政府は10年前から「地方創生」を始め、東京一極集中を是正し、地方からの人口流出を食い止める対策を進めてきた。岸田政権も少子化対策にも力を入れている。

にもかかわらず、昨年10月1日時点の外国人も含めた総人口は13年連続で減少した。日本人の減少幅は過去最大の83万7千人、死亡者数が生まれた子どもの数を上回る自然減は17年連続。50年の人口は現在よりも約2千万人減るという事態は避けられない。

国の政策によって人口減少の傾向が劇的に変わることは、もはや期待できない。ペースを少しでも鈍化させるとともに、減少を前提に国の将来、地域のデザインを本格的に議論し少子高齢社会に備える時期に来ている。

減少緩和策で戦略会議が強調するのが、人口流入が多いものの出生率が低い「ブラックホール型自治体」の対策だ。若者を吸い込むだけという意味から命名された。東京23区で目立つほか京都市、大阪市などが該当する。

これらの都市で、国の機関の移転、大学の定数減少などの是正措置と、子育て環境を整え親の負担を減らすことを急ぐよう求める。

消滅可能性自治体では、企業誘致に加え、若い女性が戻りやりたいことができるまちづくりが一つの方策だろう。

次に将来像を考えたい。戦略会議が提案する「2100年に安定的で成長力のある8千万人国家」も一つのアイデアだ。

まずは国民的な議論をスタートさせよう。その際、年金や医療といった国レベルの制度の在り方だけでなく、地域ごとの持続可能性を高める方策も検討すべきである。

具体的には、地方都市やその周辺では、自治体同士の連携、役割分担によって行政サービスを守る。次に土砂災害や水害といったリスクが少なく、鉄道駅に近い中心街などに集まって住むコンパクト化を進める。これによって老朽化から必要な橋や水道などインフラの更新量を減らせる財政的なメリットもある。

それ以外の地域についても50年にどうなるかなどを予測し、地域社会を維持するための仕組みづくりを考えるべきだ。

日用品や燃料の購入、郵便や宅配便の受け渡し、車を運転できない人の移動など生活を支えるサービスを確保する。それに加え行政の出先機関の代わりもできる組織をつくるのが重要となる。

住民主体の自治組織をつくり活用するのが現実的だろう。地域おこし協力隊のような形で若者らも受け入れ、地域ニーズに合わせて仕事を変化させるのが現実的だ。

国土の保全からは、中山間地域の山林や農地は一定の管理を続ける。山間部の集落を中心部へ移す支援や、集落がなくなる前に歴史や伝統を記録に残す「村おさめ」の手続きを用意することも必要ではないか。