2018年9月21日(金)

【論説】安倍自民党総裁3選 45%の重い意味

事実上の首相選びとなる自民党総裁選は、現職の安倍晋三首相が石破茂元幹事長を破り、連続3選を果たした。1次政権時代を含めると、戦前の桂太郎首相を超える歴代最長の在任日数が視野に入った。

今回の総裁選は、再登板以降5年9カ月に及ぶ「安倍政治」の総括が争点となった。その意味で、国会議員票と党員・党友票の乖離(かいり)に注目すべきだろう。国会議員の8割余りが首相を支持したのとは対照的に、党員票で石破氏が45%を獲得したことは、自民党の支持者の中でも首相への冷ややかな視線が広がりつつある状況を物語る。

こうした点を踏まえても、3期目の政権運営は、決して楽観できるものではないだろう。首相夫妻に起因する森友、加計両学園問題をいまだに引きずり、内政、外交とも取り巻く環境が厳しさを増しているからだ。

安倍政治は何をもたらしたのか。森友、加計問題によって行政や政治の公正性に疑義が生じ、信頼が大きく揺らぐ。疑問にも真正面から向き合おうとせず、公文書改ざんや虚偽答弁という、あってはならない事態が生じても、政治家は責任を取らない。安全保障法制、いわゆる共謀罪法などの立法も、異論を数の力で押さえつけた。

言論の府から「熟議」が消え、SNSでは、安倍政治を巡り、擁護派、批判派の双方が激しくののしり合う言葉が飛び交う。敵と味方を明確に区別する、国民の「分断」が進行したといえる。

自民党内は、こうした長期政権の弊害を感じながらも、人事の冷遇を恐れ、単色に染まる。石破氏の立候補で一石を投じたとはいえ、安倍1強になびいた総裁選は党の活力が喪失していることを浮き彫りにした。

安倍首相は、新任期の3年間で社会保障制度改革を断行する方針を示し、アベノミクスの大きな柱で長期にわたる異次元の金融緩和の出口戦略に言及した。将来不安を払拭(ふっしょく)する持続可能な社会保障制度の確立や財政再建、景気回復の実感を、個人や中小企業、地方にも波及させることは、世論調査でも明らかなように、憲法改正よりも最優先で取り組むべき課題だ。

同時に、政治の信頼回復を訴えるならば、自らの手で森友、加計問題を解明しなければならない。国有地を破格の割引で売却した動機は、首相自身が森友問題の本質と定義している。首相秘書官が加計学園に獣医学部新設へ再三助言した“特別扱い”にも疑念は膨らんだままである。

一方、外交は冷酷だ。ロシアのプーチン大統領は、北方領土問題の解決という前提条件抜きの平和条約の年内締結を提案。中国との貿易戦争を仕掛けたトランプ米大統領は、対日赤字の解消に強硬姿勢をちらつかせる。両大統領と信頼関係を構築したと胸を張る安倍外交の真価も問われる。

首相に求められるのは、アベノミクスをはじめこれまでの政策を謙虚に検証し、国会などでは独りよがりの理屈を排して国民への懇切丁寧な説明を実践すること。国際協調に背を向けるトランプ大統領に過度に傾斜する“単線”から脱皮した複線的な外交も必要だ。

人口減少や加速する少子高齢化を「国難」と位置付けるならば、「分断」の政治ではなく、野党を巻き込む幅広い合意の形成、つまり「結合力」が何よりも欠かせない。

2018 年
 9 月 21 日 (金)

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