2019年9月24日(火)

【論説】EU離脱で強行策失速 大局に立ち、突破口を

英国の欧州連合(EU)離脱を巡り、ジョンソン英首相が「何が何でも」と強引に進めた10月31日の期限での離脱強行策が、失速した。混乱必至の「合意なき離脱」も辞さない政権に対し、英議会が離脱期日の3カ月延期を可能にする措置を法制化。首相はなお期限での離脱を模索するが、奇策を弄(ろう)すればますます政局の混乱を深めるだけだろう。

7月下旬に就任したジョンソン首相が掲げたのは二段構えだ。まず、メイ前政権がまとめ、英議会で否決された離脱協定に代わる、新合意をEUとの間で達成すること。それが不可能なら「合意なき離脱」に向かうと繰り返し公言した。

だが、そもそもジョンソン首相に「合意なき離脱」以外の具体的なプランがあるのかどうかが疑問だ。8月に個別会談した独仏首脳に、最大の争点であるアイルランド境界問題について新たな解決策を提示できると示唆したものの、新提案を巡る英国側の動きは極めて鈍い。首相が突き進もうとした「合意なき離脱」は、労働党など野党と、首相方針に反対し与党保守党を除名された議員らの抵抗でひとまず頓挫した。

成立した「離脱延期法」は、EUとの合意が10月19日までに議会で承認されず、議会が「合意なき離脱」にも賛成しない場合、首相に3カ月の延期をEUに要請するよう義務付ける内容。国民の多くが「合意なき離脱」への不安を抱える中、立法化した議会の判断は妥当だと言えるだろう。

ジョンソン首相は、少数与党となった下院の主導権奪還を狙い、解散総選挙の動議も提出したが、2度にわたり退けられた。与党の支持率が高いうちに選挙を行えば勝てるという、打算が野党側に見透かされた。

ただ、強行策が失速し、下院が閉会に入った後も、ジョンソン首相は10月末の離脱を諦めていない。仮に期限延期を要請する事態になっても、EU側が全会一致で認めなければ実現しないため、延期破棄を働き掛けているとも伝えられる。

度重なる「離脱延期」にEU各国もうんざりしている。報道によれば、義務化された延期要請に「英政府は延期を望まず」との書簡を添付するなどの奇策を検討中とされるが、自国議会の決定を、他国を頼みに覆すことが一国の指導者の取るべき道だろうか。

英最高裁は、ジョンソン首相が決めた10月中旬までの議会閉会の是非を審議しており、近く判断が示される見通し。ただ、メイ前政権がまとめたEUとの離脱協定を3回にわたり否決した英国議会は、事態収拾の方向性を見失っている。今後は、改めて浮上しつつある英下院の解散総選挙や2度目の国民投票が打開の突破口となろう。

解散総選挙について労働党など野党側は、10月末の「合意なき離脱」の断念がはっきりすれば、応じる構えを見せており、問題は解散のタイミングということになる。EU側にとっても、離脱期限延長を認める大義名分が立つことになろう。

総選挙となった場合、英与野党は大局に立って膠着(こうちゃく)状態に陥ったEU離脱問題解決の道筋を具体的に示し、審判を仰ぐべきだ。EU各国など当事者だけでなく、事態を見守る世界中が「英国は、一体何がしたいのか」という疑問への回答を待っている。

2019 年
 9 月 24 日 (火)

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