2019年6月21日(金)

【論説】参院歳費返納法が成立 党利党略を忘れまい

参院議員の給与に当たる歳費の自主返納を認めた改正歳費法が、自民、公明、国民民主3党などの賛成多数で可決、成立した。8月1日から3年間に限り、歳費の国庫返納を、公選法が禁じる「寄付」の例外とするもので、1人月額7万7千円が目安と明記している。議員個人の判断に委ねられるが、自民、公明両党は所属の全参院議員が返納することを確認した。

一見すると、議員が「身を切る改革」を実行したかのように映る。しかし、内実は露骨な党利党略で押し切った定数増への批判をかわすパフォーマンス、目くらましと言わざるを得ない。

自主返納のきっかけとなったのは、昨年7月の国会で、自民、公明両党が、1票の格差の是正を大義名分に、参院定数を6増(埼玉選挙区2、比例代表4)する改正公選法を強行突破で成立させたことだ。

議員1人当たりの人口が多い選挙区だけ定数を増やし、格差を是正する手段を否定するつもりはない。だが、同時に比例代表の定数まで増やしたのは、理屈が立たない。しかも、政党があらかじめ定めた候補者順位に従い当選者の決まる「拘束名簿式」の特定枠を新たに設けた。自民党の目的は明白で、この枠により「鳥取・島根」「徳島・高知」という合区選挙区の現職議員を救済しようとしたのである。

国の財政が厳しい折、さすがに与党も後ろめたかったのだろう。参院は半数ずつ改選されることから、今夏の参院選は定数3増となる。それに伴う歳費、秘書給与など年間約2億2500万円の経費の3年分をまかなおうと、歳費削減法案を提出した。期間を3年に限定したところは、姑息(こそく)と批判されても仕方あるまい。

野党は、自民党のご都合主義による定数6増自体に反発。協議は難航したが、国民民主党が自主返納案を主張したことで、自公両党も折り合った。参院選前に対応をしなければまずいと判断したようだ。

ただ、立憲民主党は、期限を設けず衆参両院議員の歳費を月7万7千円減額し、正副議長の歳費や首相、最高裁長官の給与も削減する法案を、日本維新の会は歳費の2割削減法案をそれぞれ提出しており、全党の合意は取り付けられなかった。

参院の選挙制度改革の論議は、2013年参院選の1票の格差を「違憲状態」と判断した最高裁判決を受けて始まった。取りあえず15年の改正公選法で合区を導入してしのいだものの、改革と呼ぶにはほど遠かったため、付則で19年参院選までの「抜本的な見直し」を約束した。

抜本改革を目指すならば、二院制における使命や役割など、参院のあるべき姿を徹底的に論議した上で、制度を検討すべきだろう。民主主義の土俵づくりだけに、できるだけ多くの党派の合意を取り付けることが望ましい。にもかかわらず、自民党はその努力を怠り、6増を強引に進めた。

参院の比例代表はもともと拘束名簿式だったが、毎回のように候補者の順位付けに苦悩してきた自民党の意向で非拘束名簿式に変更した。一部とはいえ、拘束名簿を復活させたのは、身勝手というほかない。

歳費返納法を提出する発端が、抜本改革を放棄する党利党略であったことを、有権者は決して忘れてはならない。

2019 年
 6 月 21 日 (金)

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