2018年6月21日(木)

【いばらき春秋】

おっこさんは“魔法の足”を持つ。その指先から深い思考や豊かな感性がほとばしり、言葉や色彩、複雑な形を織りなす。心と直結しているような足だ▼渡辺良子さんは筑西市在住のタイプアート画家。「おっこ」は幼い頃、今は亡き父がつけた愛称だ。生後間もなく脳性小児まひを患い、肢体不自由となった。平仮名の文字盤を足指で差して会話し、タイプライターを打って絵を描く▼「◎」と「の」のキーを繰り返し打ち、紙をずらして形や線を形成する。キーは思いの色が出るまで重ね打ちする。「◎」に「の」を重ねると「◎」内の空白も染まる。根気のいる作業が続く▼新作65点を収めた4冊目の画集を刊行し、記念の展覧会を筑西市役所スピカ庁舎地下1階の多目的ホールで23日から開く。大作の「迎賓館」は完成まで486時間を要した▼人物や生き物を描いた作品には、豊かな表情も表現されている。ただ笑うのでなく、にんまり、あるいはうっすら笑っている。微妙な喜怒哀楽が繊細に描き分けられている▼「わたしのがんばりをみてほしい」-展覧会を前におっこさんが文字盤を指差すと、二人三脚の姉、洋子さんが読み上げた。魔法の足は来場者の心に、生きる希望も描くに違いない。 (勝)

2018 年
 6 月 21 日 (木)

メニュー
投稿・読者参加
サービス