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増やせ“児童救命士” 水戸市が制度化、小学校で講習始まる

「ジュニア救命士」を認定する講習を受ける児童=水戸市三の丸
「ジュニア救命士」を認定する講習を受ける児童=水戸市三の丸


児童たちに一次救命処置の技術を習得してもらおうと、水戸市は本年度、「ジュニア救命士」制度を導入し、市内の小学6年生を対象に講習をスタートさせた。救急車到着までの間に救命率を高める心臓マッサージや自動体外式除細動器(AED)による心肺蘇生術を施すことができるバイスタンダー(救急現場に居合わせた人)の裾野拡大へ、県内で児童生徒への講習などが広がりつつある。 (水戸支社・前島智仁)


キュッ、キュッ、キュッ、キュッ-。水戸市立三の丸小(同市三の丸)で2日に行われた救命講習会。同校の6年生82人が、それぞれ配布された心肺蘇生トレーニングキットの心臓部を一定間隔で押し続けると、圧迫されたキットから抜ける空気音が体育館内に響いた。

講習会では市消防本部の職員が心臓マッサージ訓練のほか、AEDの使い方、脈の取り方などを解説した。講師を務めた救急課の大信成人さんは「人が倒れていたらまず、大きな声で周囲に伝えてほしい。ちょっとした勇気を出せば、助かる命があることを忘れないでほしい」と、児童に迅速な行動を呼び掛けた。

受講した同校の村山七海さん(11)は「AEDを使うのは少し難しいかもしれない。でも、もしものときには人を助けるために頑張って行動したい」と話した。

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水戸市は本年度、県内で初めて「ジュニア救命士」制度を導入。市内の公立小全33校の6年生約2200人(2016年度)を対象に、心臓マッサージやAEDの使い方などに関する講習会を始めた。受講者にはジュニア救命士としての認定書を交付し、児童の救命に対する意識醸成につなげる狙い。同消防本部は「全小学校への講習実施は全国的にも珍しい」と胸を張る。

制度導入の背景には、年々増え続ける救急車の出動件数がある。市消防本部によると、15年の救急出動件数は1万3822件で、10年前に比べて1・4倍に増えた。これに伴い、現場に到着するまでの時間も平均約8分となり、10年間で1分ほど伸びている。

救急課の石田宏一課長は「この8分間に適切な対応が行われれば、救命率は大きく上がる。子どもたちが講習で学んだことを家族と話せば、関心を持つ大人も増える。バイスタンダーの的確性も上がり、救命の裾野が拡大するはず」と期待を込める。

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小学生を対象にした救命講習実施の取り組みは、県内でも徐々に広がりつつある。県消防安全課の調べによると、14年度に各消防本部による講習を実施した小学校は前年度比26・9%増の203校。県内全ての小学校の約3割ほどにとどまるものの、着実な伸びを示している。

さらに、県は13年3月に全国に先駆けて「AED普及促進条例」を制定。学校の授業の場で心肺蘇生法やAED使用法を学ぶ環境整備推進を盛り込み、中学、高校での救命講習を義務付けている。

県健康教育推進室は「周囲にいる大人を呼ぶだけでも効果は大きい。早いうちに救命処置を知っておく意味は大きい」と期待する。

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