2016年11月24日(木)

「抑留詩人」の世界、アニメに 折笠良監督(潮来出身) 映画「水準原点」

国内外で高い評価 27日、水戸で上映 「独特のリズム感じて」

「石原吉郎の詩の世界観を映像に翻訳した」と話す折笠良さん=水戸市文京
「石原吉郎の詩の世界観を映像に翻訳した」と話す折笠良さん=水戸市文京

潮来市出身のアニメーション作家、折笠良さん(29)が監督を務め、世界的映画祭で高評価を得た映画「水準原点」が27日、水戸市千波町の県近代美術館で上映される。波のような荒々しいうねりを表現したクレイアニメは、戦後を代表する詩人、石原吉郎の同名詩に着想。折笠さんは「シベリアに抑留経験のある石原。壮絶な記憶を心に刻んだまま、彼が捉え続けた詩の風景を映像に翻訳した。独特のリズムを感じていただければ」と来場を呼び掛けている。

折笠さんは1986年生まれ。子どもの頃から絵を描くことが好きで、中学時代は漫画家に憧れた。茨城大教育学部では絵画の研究室に在籍しながら、アニメーション制作に携わり、進学した東京芸術大大学院で本格的にアニメーション映像を学んだ。現在はアニメーション作家として主に詩や文学をモチーフに、独自の短編映像を手掛けている。

映画「水準原点」は2015年、約1年をかけて制作した。2畳ほどのスペースに白い粘土で波の造形を作り上げ、手作業で地道に形を変えながら、2カ所に固定したデジタルカメラで撮影。約7千枚の静止画像をつなぎ合わせ、6分41秒の映像に仕上げた。波のように寄せては返す不定形のイメージは、いつしか鑑賞者を引き込んでいく。

「アニメ制作は肉体労働の意識があり、地道に作る行為に意味を感じている。常に体全体を使って作業を積み上げていきたい」と折笠さん。

今作品で表現の軸に据えたのが、戦後を代表する詩人、石原吉郎の世界観。「日本の近現代詩の変遷をたどる中で、石原の詩が際立って見えた。シベリアでの壮絶な記憶が、喉に刺さった骨のように、言葉に影を落としている」

〈みなもとにあって 水は/まさにそのかたちに集約する/そのかたちにあって/まさに物質をただすために/水であるすべてを/その位置へ集約するまぎれもない/高さで そこが/あるならば/みなもとはふたたび/北へ求めねばならぬ//北方水準原点〉

(石原吉郎「水準原点」、1971年)

「『その』『そこ』などの代名詞に、あてどない感じが漂う。形を変え続ける水の本質とともに、石原独特の詩のリズムを踏まえて、映像を味わってほしい」

映画「水準原点」は、毎日映画コンクール(2015年)で大藤信郎賞を受賞したほか、世界四大アニメフェスティバルのザグレブ国際アニメーション映画祭(16年)で、日本人として初めて準グランプリに輝くなど、国内外で高い評価を得ている。

上映会では「水準原点」のほか、折笠さんの近作や、日本アニメ創世期に活躍した大藤信郎の作品も上映される。時間は午後2時から。定員250人。入場無料。問い合わせは同館(電)029(243)5111

(沢畑浩二)

■詩人・石原吉郎
いしはら・よしろう 1915〜77年。日本の詩人。敗戦後の45年冬にシベリアに抑留され、49年に重労働25年の判決を受ける。53年、恩赦により帰国。その後、シベリアでの過酷な経験を文学的テーマに昇華した。主な詩集に「『サンチョ・パンサの帰郷』1963年」「禮節」「北條」「足利」「満月をしも」など、評論集に「望郷と海」「海を流れる河」「断念の海から」など。

映画「水準原点」の一場面
映画「水準原点」の一場面

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