2017年7月13日(木)

アワビ、回復の兆し 稚貝放流、軌道に乗る

県産漁獲量、震災後に激減

アワビの稚貝を放流する準備をする県内の漁業者(県水産振興課提供)
アワビの稚貝を放流する準備をする県内の漁業者(県水産振興課提供)

東日本大震災の後、不漁を極めていた県産アワビに回復の兆しが見えてきた。県栽培漁業センター(鹿嶋市平井)が被災し、放流用約100万個が全滅したが、施設の復旧により、稚貝の放流が軌道に乗ってきた。漁獲量は2020年代にも震災前の水準に戻る見通しという。放流地域は北茨城から大洗の沿岸と広範囲。漁業者らは「水揚げが増えれば、所得も戻る」と早期復興に期待する。


本県のアワビは浅瀬の岩礁域に生息する。県水産振興課によると、漁獲量は1999年から2011年まで、例年20〜30トンで推移。うち半数は放流されたアワビとされる。

放流用は同センターで栽培する。稚貝を約3年かけて直径3・5センチほどの大きさに育て、大洗以北の県内8漁協に販売。漁業者が6〜7月ごろ、計約20万〜30万個の稚貝を放流していた。県海面漁業調整規則で定めた採取可能な大きさの11センチに成長するには、放流から4〜5年かかる。

同センターは11年3月の東日本大震災で被災した。鹿島港近くの埋立地にあり、地盤が陥没し、地中の通水管や配水管が大きく損壊。アワビを育てる水槽に水や酸素が送れなくなり、放流用アワビ約100万個が死滅した。

同年と翌12年の放流数はゼロとなった。県水産試験場(ひたちなか市平磯町)の旧設備で栽培に取り組んだものの、大幅な規模縮小を余儀なくされ、13年と14年の放流数は震災前の3分の1に当たる約10万個にとどまった。

アワビの放流数が激減したことで、県内の漁獲量は年々減少。多くの漁業者は他の漁との兼業だが、水産庁のまとめによると、15年は6トン。16年は3・5トンと、記録が残る1956年以降で最も少なかった。

同センターは13年3月に復旧工事が終わり、同4月に栽培を再開。15年と16年の放流数は30万個と、震災前の水準に並び、復調の兆しが見えてきた。今年も7月末までに約30万個の稚貝が放流される予定だ。

県の担当者は「早ければ20〜21年ごろに震災前の水準に戻る公算も出てきた」と見通す。ただ、漁獲の安定には、乱獲の防止や、アワビが成長するための藻場の整備も欠かせない。

県は今年5月、ひたちなか市の那珂湊漁業区域1・5ヘクタールに人工藻場を整備。大洗漁業区域でも年度内に整備する方針だ。

5月末にアワビ3万8400個を放流した大洗町漁協の幹部は「漁獲量が減り、若手を中心に諦め感が出ていた。漁獲が増えれば所得も向上する」と期待を寄せる。 (鈴木剛史)

今年に入って放流されたアワビの稚貝(県水産振興課提供)
今年に入って放流されたアワビの稚貝(県水産振興課提供)

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