2017年11月20日(月)

「水戸は縁起いい土地」 直木賞作家・恩田陸さん

大河ロマンに意欲

「水戸は高校時代の友達がたくさんいて、アットホームな雰囲気です」と話す恩田陸さん=水戸市宮町
「水戸は高校時代の友達がたくさんいて、アットホームな雰囲気です」と話す恩田陸さん=水戸市宮町

小説「蜜蜂と遠雷」で直木賞に輝いた作家の恩田陸さん(53)=県立水戸一高出身=が13日、受賞後初めて水戸市を訪れ、同市内の書店で本紙のインタビューに答えた。恩田さんは「高校時代を過ごした水戸は友達も多く、心が和む。ここは縁起のいい土地」と話し、次回作については「書きたいことはいろいろある。いずれは大河ロマンのような何代にもまたがる話に挑んでみたい」と意欲を示した。

父親の転勤で幼い頃から長野や富山、秋田など各地を回り、目にした美しい山河は原風景として深く刻まれている。ただ、高校生活を送った水戸の記憶は、景色というより特別な体験がベースとなっている。新聞部で自分の考えを発表したり、フォークバンドを組んで学園祭で演奏するなど、青春を謳歌(おうか)した。「友人たちと楽しい時間を過ごしていたなあ」と振り返る。

本屋大賞にも輝いた「蜜蜂と遠雷」は、ピアノコンクールを題材にした青春群像劇。繰り返される演奏シーンを細やかに書き分け、音楽の魅力や才能を、深い考察を交え描いている。

作家デビューから25年。直木賞は6度目のノミネートで栄冠を手にした恩田さんだが、エンターテインメント小説を追求する姿勢は受賞前と変わらない。「長いこと小説を書いているので、賞をもらったという実感が湧かない。ただ、これまでやってきた仕事が評価されたと捉えている」

一方、直木賞の審査員を務めた浅田次郎さん(65)は、選評の中で恩田さんをこう絶賛した。「恩田作品は昔からのファン。昨今、安易にシリーズものを書く傾向にあるが、恩田さんは一作一作違うステージを用意し、似ても似つかぬ世界を提示してくれる。ここが素晴らしい」

多様な世界観に挑み続ける理由について、恩田さんは「単に興味の幅が広いということ。それから、同じものを書いていると縮小再生産になってしまう。なので、意図して違うものを書いたり、あえて続編は外している」と冷静に答える。

現在、7本の連載を抱える。生活は基本的に昼型。朝早くに書き始めて夕方までに仕上げることを心掛けている。疲れたら近所を散歩し、ついでに夕飯のおかずを買ったりして気分転換を図っている。「夜は締め切りが迫っているとき以外は書かない。徹夜は体力的にできなくなった」

何よりの楽しみが寝る前の読書という。ジャンルは多方面にまたがり、年間約300冊を読破する。「人が書いた本は、仕事の参考というより、一読者になって物語の世界に浸っている。最近は読んだ内容をすぐ忘れてしまうので、感想だったり、気に入った表現などを作品ごとにメモを付けている」

この日はインタビューに先立ち、恩田さんは茨城の名声を高め明るい話題を提供したとして、県庁で特別功労賞の表彰を受け、併せて「いばらき大使」にも委嘱された。委嘱状を手渡した大井川和彦知事とは高校の同級生で、「まさか大井川さん本人から(委嘱状を)手渡されるとは思わなかった。すごいことですね」とほほ笑んだ。 (沢畑浩二)

■おんだ・りく
1964年青森市生まれ、仙台市出身。県立水戸一高を経て、早稲田大教育学部卒。92年「六番目の小夜子」でデビュー。「夜のピクニック」で2005年に吉川英治文学新人賞と本屋大賞。07年「中庭の出来事」で山本周五郎賞。東京都在住。

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