2018年5月26日(土)

原子力機構 高温ガス炉 県産炉 輸出なるか

高い技術力 ポーランドが熱視線

HTTRの原子炉格納容器内。原子炉出口につながる中央下の配管から高温の熱を取り出すことができる=大洗町成田町
HTTRの原子炉格納容器内。原子炉出口につながる中央下の配管から高温の熱を取り出すことができる=大洗町成田町

茨城産の原子炉が海を渡るかもしれない-。日本原子力研究開発機構(原子力機構)が大洗町に保有する、高温ガス炉の高温工学試験研究炉(HTTR)。世界トップの技術力が東欧ポーランドの目に留まり、日本の技術を輸出する動きが加速してきた。国内で原子力の研究開発が停滞する中、関係者は実用化への「ラストチャンス」と意気込む。

高温ガス炉は、現行の原発の軽水炉と違い、冷却に水ではなく化学的に安定しているヘリウムガスを使う。構造的に炉心溶融や水素爆発を起こす恐れがなく、安全性は高い。

出力は30万キロワットと大型化に向かないが、原子炉の温度が高いのが特徴で、この熱を発電だけでなく水素製造や地域暖房などにも使える利点がある。原子力機構はHTTRで世界最高の950度の熱の取り出しに成功している。

■30年に実用化

日本は昨年5月にポーランドとの間で戦略的パートナーシップ行動計画に署名。この中に高温ガス炉の研究開発が盛り込まれ、輸出に向けた協力関係が具体化した。

原子力機構によると、エネルギー源で石炭への依存度が高いポーランドは、二酸化炭素の排出量の抑制が課題。このため、石油精製や化学プラントなどに熱を供給するシステムとして高温ガス炉に注目し、将来的に20基程度の導入を目指している。

こうした動きを受けて国内では昨年、実用化に向けた「産学官協議会」にワーキンググループが発足。日立製作所などHTTR建設に関わった各企業も加わり、原子力機構担当者は「オールジャパン体制が整った」と話す。

HTTRの経験が生きるのが、ポーランド側が2025年を目標とする研究炉の建設。研究機関同士の協力協定も結び、原子力機構は現地に職員も派遣。担当者は「研究炉の設計はほぼHTTRがベースになる」としている。

ポーランド側は30年に実用炉の完成を目指しており、原子力機構は本年度から研究炉と実用炉の基本概念の設計を共同で実施していきたい考えだ。

■背水の覚悟

軽水炉が主流の中、高温ガス炉は長らく光が当たらなかった。

国内で研究開発が始まったのは60年代と歴史は古いが、実証炉の計画はなく、福島の原発事故によって国内での開発はさらに厳しさを増す。過去にはカザフスタンへの輸出構想も浮上したが、予算上の理由などから凍結となった。このため原子力機構の技術者は「今回駄目なら先はないかもしれない」と、背水の覚悟で交渉に臨む。

HTTRは現在は運転停止中。新しい規制基準に基づく審査を受けており、来年10月の運転再開を目指す。一方で、研究開発が活発化する海外では中国が実証炉2基を建設中で、原子力機構はポーランドへの輸出を進める上でライバルとみる。

日本側の強みは、原子炉建設を、高いレベルの国産技術で全て賄える点だ。特殊な燃料も東海村の核燃料メーカーで製造している。原子力機構高速炉・新型炉研究開発部門の國富一彦副部門長は「技術力の高さで勝負していく。長い運転経験で蓄積したデータがあり、厳しい安全審査も経る。これはわれわれに有利になる」と意気込む。(戸島大樹)

★ 高温工学試験研究炉(HTTR)

原子力機構大洗研究所にある国内唯一の高温ガス炉。熱出力3万キロワットで、1998年に初臨界に達した。炉内を循環するヘリウムを950度まで加熱して取り出すことが可能で、2010年には世界最高記録の連続50日運転に成功。水を熱分解して水素を製造する研究も進められている。

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