【論説】広域強盗追及へ 送還検証と対策強化を

広域強盗事件で「ルフィ」などと名乗り、インターネット上の「闇バイト」を通じて実行役を募り、犯行を指示していた疑いのある男4人のうち2人がフィリピンから強制送還され、警視庁は特殊詐欺事件に絡む窃盗容疑で逮捕した。被害額が60億円以上に上る特殊詐欺の調べを進めるとともに、各地で相次いだ強盗への関与を追及する。

逮捕されたのは、今村磨人容疑者ら。4人は首都マニラの入管施設に拘束され、日本側は一斉送還を求めていた。特殊詐欺グループのリーダー格とみられている渡辺優樹容疑者ら残る2人についても、裁判所が現地の暴行事件を巡り進行中の裁判打ち切りを決め、送還が可能になっている。

特殊詐欺を巡っては2019年11月、日本の高齢者に詐欺の電話をかけるフィリピンの拠点が現地当局に摘発され、警視庁は21年2月までに4人の逮捕状を取り、送還を要請してきた。ところが、その調整に手間取っているうちに広域強盗が続発。今年1月には東京都狛江市で90歳女性が殺害されるなど、凶悪な手口が社会を震撼(しんかん)させた。

残る2人の送還と広域強盗などの全容解明を急ぐ一方で、この間の経緯を詳細に検証しなければならない。日本の捜査権が及ばない海外に足場を移す犯罪グループは多いとされ、指示役と実行役とをつなぐ闇バイトの監視・規制も含め、対策を強化する必要がある。

今村容疑者らがいた入管施設では職員に賄賂を渡せば、エアコン付きの特別な部屋をあてがわれ、スマートフォンなどが手に入り、塀の中から日本の被害者に電話をかけたり、実行役と連絡を取ったりすることもできるという。また強制送還を逃れるため、事件をでっち上げて被告になり、施設に居座る例が多いことはよく知られている。19年の摘発で36人が拘束され順次、日本に身柄が移送されたが、渡辺容疑者ら4人は現地にとどまり続けた。もっと早く送還が実現していれば、狛江事件を含め広域強盗を防ぐことができたかもしれず、悔やまれる。

今回はフィリピン大統領の訪日が迫る中、法相が「訪日までに問題を解決したい」と表明。送還の手続きが加速したが、現地の事情に左右されない捜査協力の仕組みを模索する必要があろう。

闇バイトへの対策も急務だ。「高収入」をうたう募集のツイートなどがネット上にあふれている。もともとは特殊詐欺で被害者から現金を受け取る「受け子」を集めるために使われていたが、広域強盗でも、これまで逮捕された30人以上の実行役の多くが応募していたことが分かっている。

警視庁などは、ツイッター上の闇バイトをうかがわせる書き込みに警告メッセージを送信している。さらに警察庁は3月から、ネット上の違法・有害情報の通報受け付けやサイト管理者らへの削除依頼の対象に「爆発物・銃器の製造」「殺人、強盗」などを追加、監視体制を強化する方針を明らかにした。実行役を募集するような情報も対象になるとしている。

対策を前倒ししたり、民間の協力も得て監視の網を広げたりすることも考えたい。それに加え、住宅街で下見をしているような不審な人物や車の情報を共有し、狙われやすい高齢者の見守りに生かすなど安全安心の確保に力を注ぐ地域社会の取り組みも求められる。