東海村「J-PARC」 未知の素粒子、検証へ 米研究裏付け、世界注目:茨城新聞

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2021年4月22日(木)
東海村「J-PARC」 未知の素粒子、検証へ 米研究裏付け、世界注目


【写真説明】
J-PARCのミューオンビームラインを使った実験を説明する高エネルギー加速器研究機構の三部勉准教授=東海村白方



大強度陽子加速器施設「J-PARC」(茨城県東海村)の素粒子研究に世界中から大きな注目が集まっている。米・フェルミ国立加速器研究所が7日、物質を構成する素粒子の一つ「ミューオン」が素粒子物理学の標準理論から外れる挙動を捉えたと発表したためだ。J-PARCでは、別手法でミューオンの精密測定を目指す国際共同実験の準備を進めており、この実験で、標準理論の予想値と実験値のずれが決定的となれば、未知の素粒子や力が存在することを裏付けることになり、ノーベル賞級の成果となる。

フェルミ研究所が確認したのは、ミューオンの磁力の強さの実験結果と、標準理論に基づく予測とのずれで、直径14メートルのリング状の蓄積磁石を使って測定した。未知の素粒子や力がミューオンに影響を及ぼし、測定結果を変えた可能性が浮かび上がった。2004年にもすでに米・ブルックヘブン国立研究所で同様の測定結果が出ていたが、今回もほぼ同じずれが生じる測定結果となった。

ただ、ブルックヘブン研究所とフェルミ研究所の実験は同様の装置を利用しており、標準理論とのずれを決定的にするためには、これらとは別の独立した実験における同様の結果が必要となる。そこで期待がかかるのが、J-PARCの大強度ビームを用いた新しい手法による実験だ。

J-PARCで実験を行う世界9カ国の約120人による国際共同研究チームの代表で、高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所(つくば市)の三部勉准教授は、今回の結果について、「実験と理論の誤差が20年前とほぼ同じで、衝撃的な結果」と語る。

J-PARCの物質生命科学実験施設では、研究を進めるに当たり、人工的にミューオンを生成するビームラインの施設と建屋を70〜80メートル延伸する計画で準備を進めており、2025年の工事完成とデータ収集開始を目指している。

J-PARCの実験では、遠くまで広がらずにビームを飛ばせるレーザービーム、フェルミ研究所より大幅に小さい直径66センチの蓄積磁石、崩壊する陽電子の方向を図る飛跡検出器を使い、ミューオンの「異常磁気能率」や「電気双極子能率」を世界最高精度で測定し、より厳しい検証を進める。同機構が持つ素粒子の様子を捉える検出器「ベルII」(つくば市)も、理論計算で研究に関わっていく。

素粒子原子核研究所の斉藤直人所長は、ブルックヘブン研究所とフェルミ研究所の結果について「実験の誤差が全く同じ方向にずれているのは驚き。自然の奥底に眠っている深淵さに触れた気がした」と語り、「大げさな言い方かもしれないが、ミューオン1個の中に宇宙の歴史が全て刻まれており、全ての相互作用の可能性が計算の結果として入ってくる。これをJ-PARCのビームでチェックするのがわれわれの今後の目標になる」と話した。




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