
【映画】
『シン・仮面ライダー』池松壮亮&柄本佑&森山未來がトリプルライダー鼎談 ラストバトルのキーワードは「泥仕合」
“原点”をリスペクトしつつ生まれた、新たなオリジナル作品となる映画『シン・仮面ライダー』(公開中)。脚本・監督を庵野秀明が務め、本郷猛/仮面ライダーを池松壮亮、ヒロイン・緑川ルリ子を浜辺美波、一文字隼人/仮面ライダー第2号を柄本佑が演じる。公開から1ヶ月以上が経過した今でも、引き続きヒットし、興行収入は歴代の『仮面ライダー』映画史上最高記録&初の興行収入20億円を突破している。
【動画】『シン・仮面ライダー』池松壮亮&柄本佑&森山未來がトリプルライダー鼎談 さまざまな思いを熱く語る
このたび、池松壮亮、柄本佑、森山未來という『シン・仮面ライダー』におけるトリプルライダーによるスペシャル鼎談が解禁となった。鼎談では、チョウオーグ/仮面ライダー第0号の動きが決定するまでの話や、話題となっているクライマックスの激闘についてなど、ファン必見の超貴重なエピソードが満載の内容となっている。
■撮影秘話が続々 クライマックスバトルのキーワードは「泥仕合」
――古くからのお付き合いなのでしょうか?
【森山】僕と池松くんは今回が初共演です。
【柄本】僕と池ちゃん(池松)は過去に映画『夜のピクニック』のときに一緒にやらせてもらいましたが、すれ違ったくらいでした。今回がほぼ初共演です。(森山)未來さんとはいろいろな会場で偶然会って話して、ということはありましたが、同じシーンに存在していることは初めてです。
――本作で共演すると知ったときのお気持ちはいかがでしたか?
【池松】とてもうれしかったです。敵味方はもちろんありますが、これ以上ないメンバーで「この3人で『シン・仮面ライダー』を作っていくんだ」と思うとワクワクしました。みんな30代ですし。
【柄本】そうそう。テレビシリーズの『仮面ライダー』はもっと若い子たちがライダー役をやる印象ですが、こういう世代の僕らが仮面ライダーをやれるのは面白そうだと感じました。現場に入ってからのナチュラル感は最初からできあがっていました。
【森山】この皆さんとできるのがすごく楽しみであると同時に、庵野秀明さんがどういう演出で世界観をまとめてくるのかを知っておきたいと思いました。決めないなら決めない、わからないならわからないでいいけど、どういう体制なのかを前もって知っておきたかった。スーツアクターでなく演者が変身後もアクションを行うかもしれないという話だったので、芝居しながら戦うのか、殺陣をどう付けていくのかを打ち合わせたいと思い「1回、3人で話せませんか」と提案しました。どういう風に芝居の質感を作っていくのか、例えば劇画調なのかナチュラル目でいくのかを知る場にはなったけど、その答えも基本的には僕らに委ねるというものでした。現場でもそうでしたが、ある演出・シチュエーションみたいなものは骨組み的にはあるけれどもどう肉付けしていくのか、その入り口は庵野さん以外のスタッフや僕ら俳優が作ります。僕が現場へ入る前にお2人はすでに体験されていたし、「そういうものになるだろうな」という想定は僕の中にもありました。与えられた本や演出で自分たちが受け身でいればよいというより、もうちょっと自発的、能動的な空気感になりそうというのはみんなシェアしていたのかなと思います。
――クライマックスの本郷・一文字・イチローのバトルシーンは、お3方を中心に考案していったと伺いました。庵野さんから「泥仕合」という差し込み原稿(※現場で追加される台本)も入ったそうですね。
【池松】「泥仕合」はキーワードになりました。
【柄本】その日に撮りたいとなって段取り(※本番前に行う動きの確認)が始まったら「変えたい」となって現場で調整するための待ち時間が発生し、3、4時間経って「1回持ち帰って明日にしましょう」となりました。僕は誰かがぽつぽつとしゃべったりしゃべらなかったり、20分くらい間がある時間が割と好きです。「どうしたらいいかわからないから考える」という部分も含めて、そういった“ひねり出す”時間が作品を作ると思います。今って、現場であそこまで悩める時間がないですから。
【池松】そうですよね。ぜいたくな時間でした。学生映画をやっていたころを思い出しました。
【柄本】もちろん大変だし苦悩する時間でもあるしつらい時間でもあるけど、ああいった時間がやっぱりないとなとは思います。
【森山】『ドキュメント「シン・仮面ライダー」~ヒーローアクション挑戦の舞台裏~』で描かれたように、アクション監督の田渕景也さんとアクションけいこをしたり絵コンテやアクション映像を作って…というやり取りは撮影スタジオに入るまでずっと続いていましたね。
【池松】そうですね。それを繰り返して泥仕合にたどり着いたようなところがありました。めまいのするようなあの過程を通ったからこそ見つかったと思います。
【森山】田渕さんたちと僕がアクション練習をしているのと並行して撮影は行っていて、その中でどんどん変わっていったんだろうなとは体感として持っていました。
――今回、仮面ライダーのマスクやスーツを着ると可動域もかなり限定された中でのアクションシーンだったようですね。
【森山】合皮とはいえ、引っ張られるので動きに制限はかかりますし、汗をかくけど熱が逃げないから蒸れるし、冷えても水分が揮発しないからただただ身体が固まっていくという…(笑)。しかも脱ぎ着するのが面倒くさいからそのまま待機しちゃうんです。身体に悪いことをずっとやり続けた感じでした(笑)。
【柄本】身体が固まっちゃうから、座付きのマッサージ師さんがついてくれていましたよね。池ちゃんは最初足をひねっていたけど、その辺りのケアもしていただきました。その方がめちゃくちゃうまくて…。
【池松】本当に。全治を1ヶ月早めてくれました。現場についてくださった数名の先生たちには感謝しきれません。
――森山さんはチョウオーグ/仮面ライダー第0号の動きをどのように考案されたのでしょう。瞑想=チャクラを練るといったことがキーワードになっていったと伺いました。
【森山】動きに関してはそうですね…。本編では使われなかった部分が多いのですが、変身前の基本的な動き方は瞑想や、「プラーナ」というキーワードから考えていきました。プラーナはサンスクリット語で「大気中に存在しているエネルギー」といったような抽象性のある言葉ですが、プラーナを呼吸なのか、体内に取り込んで循環するという考えで動きを作れたら面白いんじゃないですか、という提案はしました。
――現場では、ミリ単位で池松さん・柄本さんのマフラーの位置調整があったと伺いました。森山さんも同様だったのでしょうか。
【森山】僕も同様にありました。
■本郷、一文字、イチローの主義の根幹にあるのは?
――お3方はそれぞれ、本郷・一文字・イチローの“主義”をどのようにご覧になっていますか?
【池松】本郷に関していうと、他のキャラクターと違って「変身」という言葉を使わないし、最初から一貫しています。『シン・仮面ライダー』のキャラクターは敵味方みんなそれぞれがそれぞれに後悔したり、変化していくんですが、本郷だけは変化がない。主義が一貫しています。その主義の抱える矛盾を仮面を被ることで乗り越えていきます。ただし本郷自身は変わりません。ヒーローものといえば普通は逆境や困難や迷いを最後には突破していくものですが、そのままであり続けます。本郷ではなく、本郷の主義とは相反する、仮面の主義との融合によって調和がとれて乗り越えていきます。その点において新たなヒーロー像だと思いました。この作品のポスターのキャッチコピーは「変わるモノ。変わらないモノ。そして、変えたくないモノ。」ですが、本郷に関しては「変えたくないモノ」が全てだったのではないかと思います。
【柄本】一文字に関しては、池ちゃん演じる本郷に対するキャラクターであるなと思っていました。陰と陽ではないですが、そういったことはイメージしながら演じていたように思います。僕も最初は悪い奴として出てきて、ルリ子によって仮面ライダー側に付くという変化はあるんだけど、マインド的には変わるけど一人の人間としては変える必要はないなと思っていました。一貫して“明るさ”は意識していました。
【池松】ラストに関わるシーンなので詳しくは言えませんが、一文字が孤高を主義としながら孤高じゃなくなるのは大きな変化ですよね。
【柄本】そうだね。
【森山】個人の幸福を追求するためには絶望が深ければ深いほどSHOCKERの理念が適応されるという意味では、本郷とイチローは近いところにいるなとは思います。イチローは母を、本郷は父を殺されていますから。一文字も謎に包まれているとはいえ、絶望は抱えています。それをどうエネルギーに変換していくかが、イチローにおいてはハビタット計画でした












