2018年9月4日(火)

市街化調整区域の住宅建築特例 茨城県内 まちづくりに一長一短

【AD】

■集落人口維持に貢献/「コンパクト」阻害も

開発を抑制する市街化調整区域で、住宅の建築が特例的に認められる「区域指定」制度が始まって15年超が過ぎた。これまでに茨城県内20市町が導入。既存集落の維持を含む地域活性化に一役買っている。ただ、虫食い的な市街化が進む懸念が指摘されており、コンパクトなまちづくりを阻害する可能性もある。取り巻く環境に応じて運用を柔軟に見直す姿勢が行政に求められそうだ。(水戸支社・鈴木剛史)

■最低300平方メートル

区域指定は、市街化調整区域でも例外的に規制を緩和した「既存宅地」の制度が、法改正で廃止となった代替措置として県が2002年に創設。翌03年に鹿嶋市が第1号となった。

運用に当たっては条例で法的な根拠付けをする。県か権限移譲を受けた市町村が地域の特色を踏まえてエリアを定める仕組みだ。県基準では、おおむね50戸以上の建物が並び、インフラが整備されていることが指定の主な要件。建築に必要な最低敷地面積は300平方メートルとなっている。

市街化区域と市街化調整区域を分ける線引きが行われている県内33市町村のうち、水戸、日立、土浦、石岡、常総、常陸太田、つくば、鹿嶋、那珂、取手、潮来、筑西、板東、かすみがうら、桜川、神栖、つくばみらい、茨城、阿見、境の計20市町が導入した。

■悪循環を絶つ

この制度は市街化調整区域内で既に形成されているコミュニティーを維持するのが狙いだ。各自治体の担当者は「住宅が建てられなければ人口は増えようがない。人が少なくなれば廃れていく一方だ」と異口同音に危機感を募らせる。

阿見町は今年6月に区域指定を導入。対象は人口減少が続く6集落計147・8ヘクタールだ。町の担当者は「市街化区域では人口が増えているのに、調整区域は減少幅が大きい。転入者を集め集落を保全したい」と強調する。導入後、不動産業者を中心に問い合わせが多くなっているという。

那珂市は17年に市街地から離れた14集落を区域指定すると、今年2月までに17軒の住宅などが新たに建築された。市の担当者は「一定のニーズがあったと考えている。今後も周知に力を入れたい」と話す。

■理念に逆行

ただ、区域指定制度は虫食い的な市街地の拡大を招く“もろ刃の剣”の危険性をはらんでいる。

05年に区域指定を施行した水戸市は、17年度までにエリア内で計2485軒もの建物が新たに建築され、人口も08〜15年で約5000人増えた。特に笠原町、平須町、見川周辺などの郊外で宅地化が進んでおり、若い世代の流入が目立つという。「県庁が近く、商業施設や高速道路のインターチェンジもある。地価も中心市街地と比べ安い」(不動産関係者)という背景が影響している。

つくば市も区域指定を導入した07年度以降、17年度までにエリア内で約千件の開発を許可している。

こうした動向に近年、議会から「コンパクトシティーの理念に反する」「検証や見直しが必要だ」との指摘が出ている。

しかし、行政側にとって実態把握は困難な作業だ。ある市の担当者は「戸籍謄本などの提出がないため、どんな人が建てたのか調査が難しい」と明かす。こうした中、水戸市は17年度に実態調査に取り組み、現在精査を急いでいる。市の担当者は「必要に応じて区域の縮小や基準見直しを含め検討する」としている。

★市街化調整区域

都市計画法で「市街化を抑制すべき区域」と定義される。乱開発を防ぐとともに、田園環境を保持するための地域で、住宅の建築は、農林漁業の従事者や土地出身者など一部を除いて認めていない。土地の用途も大きく制限される。



次の記事:事務所兼倉庫が全焼 神栖

全国・世界のニュース

2019 年
 7 月 17 日 (水)

メニュー
投稿・読者参加
サービス