2018年10月27日(土)

道路法改正義務化5年 老朽橋点検の負担ずしり

県内市町村 年13億円、修繕に影響

老朽化などが原因で通行止めとなっている幸久橋。本年度中に撤去が予定されている=常陸太田市上河合町
老朽化などが原因で通行止めとなっている幸久橋。本年度中に撤去が予定されている=常陸太田市上河合町

橋梁(きょうりょう)の老朽化点検の費用が、管理者である自治体に重くのしかかっている。国内約73万橋の7割以上を管理する市町村の負担が特に大きく、茨城県道路維持課によると県内の市町村管理約1万5千橋の点検費は年間約13億6千万円(2017年度)に上る。5年に1度の点検を義務付けた道路法の改正から5年。長寿命化による将来的なコスト縮減のために必要な点検だが、財源確保が難しい市町村からは「点検費が膨大で、修繕費を捻出する余裕がない」と悲痛な声が聞かれる。 (報道部・三次豪)

■すぐ2巡目に
「トントン、トントン」。専用ハンマーでコンクリートの橋桁をたたく音が響く-。県内各地の橋梁で、市町村から委託を受けた民間業者が、ひび割れやボルトの緩みがないか慎重に点検を行っている。

県内で市町村管理の橋梁が最も多い筑西市には、農業用水路に架かる橋を中心に967橋あり、1橋当たり20万〜30万円、年間約8千万円の点検費が財政を圧迫している。市道路維持課は道路など他のインフラ整備や点検作業も抱え、橋梁に専門の職員を充てられないため、点検は自前でなく委託するしかない。

国から点検費の55%を補助されるが、市の負担はずしりと重い。修繕費の捻出にも影響し、要修繕と判定された100橋以上がやむを得ず手つかずという。同課の担当者は「今は点検1巡目なので何とかなっているが、今後どうなるか」と不安を漏らした。

5年に1度の点検は本年度1巡目が終わり、2019年度からすぐ2巡目に入る。前回点検した橋梁でも車検と同様、同じ点検が求められる。県内市町村の担当者が集まるメンテナンス会議では「5年に1度の点検費は予算措置が厳しい」「健全な橋だけでも、もっと点検間隔を長くできないか」など、切実な意見が上がっているという。

■築50年が半数に
高度成長期に一斉に建設された橋や道路などのインフラは、老朽化時期も一斉に迎える。国土交通省の調査によると、10年後には約73万橋の約半数が建設後50年となる見通しだ。

老朽化する交通インフラの危険性に注目が集まったのは、2012年に9人が死亡した中央自動車道笹子トンネル(山梨県)の天井板崩落事故。これを機に、道路法改正とインフラ長寿命化計画の策定が行われ、国は地方自治体に対し本格的に警鐘を鳴らし始めた。

国交省社会資本整備審議会は14年の提言で「危険水域に達している。今すぐ本格的なメンテナンスにかじを切らなければ、近い将来、橋梁の崩落など人命や社会システムに関わる致命的な事態を招く」と、厳しく指摘している。

■「渡れない橋」
県内の橋梁点検は昨年度までの4年間で、県と市町村管理の計約1万4千橋のうち1万1300橋が1巡目を完了。そのうち28橋について、緊急措置が必要とする最も深刻な判定結果が出ている。各地で現在、ひび割れなどで全面通行止めや車両通行規制が行われている「渡れない橋」も徐々に増えている。

筑波大などの研究グループの推計では、今後50年間の全国の橋梁の修繕費は総額約27兆円に上る。政府は早めのメンテナンスによる長寿命化により、維持管理費の平準化とコスト縮減を図る考えだが、管理者の自治体は定期的な点検を強いられ、老朽化橋梁の増加も続くため、その負担軽減は見通せない。

赤外線やドローンを使った安価な点検技術の開発も進められているが、どこまでコスト縮減に効果があるかは未知数。県道路維持課は「財政力が乏しく、専門技術を持った職員のいない市町村は、老朽化対応が困難になってくる可能性が高い」と懸念を強めている。

★橋梁の点検
2014年に改正された道路法で、5年ごとの「近接目視による点検」が義務付けられた。診断結果を「健全」から構造物の機能に支障が生じている状態の「緊急措置段階」まで4段階に区分。結果に応じ、通行止めや通行規制、応急措置を実施した上で、修繕、更新、撤去のいずれかの措置を講じる。



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