2018年10月31日(水)

真岡線 SL1台体制に 伸び悩む乗客数 維持経費重く

真岡線で運行されている蒸気機関車(SL)のC11形。沿線には多くのSLファンが撮影に訪れる=筑西市中舘
真岡線で運行されている蒸気機関車(SL)のC11形。沿線には多くのSLファンが撮影に訪れる=筑西市中舘

真岡鉄道を走る蒸気機関車(SL)が、現行の2台から1台に減る。真岡線SL運行協議会(会長・石坂真一真岡市長)は、同協議会が同線下館駅(筑西市)と同茂木駅(栃木県茂木町)の区間約42キロで運用するSLのC11形とC12形の2台のうち、C11形の運行を取りやめる方針を決めた。背景には、乗客数の伸び悩みや重い維持経費などがある。もう1台のC12形の運行は継続されるが、SL2台で客車をけん引する「重連運行」は見られなくなる。ファンからは「事業が先細りにならないか」と不安の声も上がる。(筑西支社・冨岡良一)

■協議会で方向性

筑西市や真岡市、栃木県芳賀郡4町などでつくる同協議会は、5月の総会でC11形の運行を取りやめる方向性を決めた。

石坂市長は9月28日、市定例会見後の取材に対し、C11形の譲渡先について「これまでに2自治体と2企業から引き合いがある」と明かした。その上で「SLの負担が非常に重い。1台あれば十分であろうということで、もう1台の譲渡を決定した。市だけでなく協議会と真岡鉄道で譲渡先を決定していく。全般検査中のC12形が戻ってくるまでには譲渡先を決定したい」と話した。

同線のC11形は真岡市が所有し、1998年から運行。一方のC12形は運行協議会が所有し94年から運行されている。C12形は保存状態も良く「運行する路線は他にない」という希少性がある。C12形は現在、さいたま市で全般検査を実施中で、終了するのは2019年の初頭に入るという。

SLを1台に減らす大きな理由の一つが乗客数の伸び悩みだ。ピーク時の1999年度に約4万9千人だった同線のSL乗客数は、2017年度には3万2千人に減った。SL2台の運行に年間約8千万円の経費が必要とされるが、SLの運賃収入は約4千万円に落ち込んだ。同線自体の乗客数も1994年度の171万2千人から、2017年度には97万8千人まで減少。同線を運行する真岡鉄道は、17年度に約2800万円の経常赤字を計上した。

■バックアップ機能

SLを2台持つメリットは、SLに必要とされる車検期間や、故障した場合のバックアップ機能だ。2台あれば、片方が使えない状態でも完全運休は免れる。

SLは6年に1回、約半年間、車両を部品に分解して点検する全般検査が行われる。その負担は重く、17年度のC11形の全般検査は費用約1億4500万円が必要になった。

SLを減らす方針に、ファンからは嘆きの声が上がる。鉄道ファンでつくる「もおかSL倶楽部」会員の石橋良章さん(58)=筑西市=は「2台以上のSLを運用する路線は大井川鉄道(静岡県)以外になく、1台に減ると他のSLを運用する路線と違いを出すことが難しくなるのではないか」と懸念する。

■設備投資の必要性

公共交通を担当する真岡市企画課は「1台体制は総合的な判断。鉄道の経営が厳しい。選択肢はもう他にない」とし「軌道や橋などの鉄道設備の傷みが激しく、投資が必要な時期に来ている。存続自体を真剣に考えなければならず、沿線一体となって取り組まなければいけない」と、危機意識をあらわにする。

今後は、SL1台体制での誘客戦略の練り直しが必要となる。本物の煙を上げ汽笛を鳴らして走るSLは文化財的な要素を持ち、鉄道の単なる誘客だけでなく路線地域のイメージ向上に大きな役割を果たしている。採算だけでは計れないそうした側面を、どう考えるかも重要だ。人口減少時代の鉄道は、経費負担だけを見れば維持の難しい時代に入った。SLを試金石に、沿線自治体の新しい価値観が求められている。

全国・世界のニュース

2018 年
 11 月 16 日 (金)

メニュー
投稿・読者参加
サービス