2018年11月2日(金)

県近代美術館・ポーラ美術館コレクション (3)
セザンヌ「アルルカン」 人物と空間、研究の痕

ポール・セザンヌ(1839〜1906年)は、キュービスムをはじめとする20世紀絵画の展開に多大な影響を与え、「近代絵画の父」と称される。若き日のセザンヌは印象派の画家、カミーユ・ピサロ(1830〜1903年)とともに制作し、印象派展にも参加しているが、やがて、対象の実体よりも光の中で移ろいゆく、かりそめの現象を捉えようとする印象派の技法と思想に限界を感じ、印象派が獲得した明るい色彩と、堅牢な形態や構成を結び付けようと探究を深めていく。

1880年代から90年代にかけてのセザンヌは、しばしば人物画に取り組んでおり、この「アルルカン」は、息子ポールにイタリアの仮面即興喜劇に登場するアルルカン(道化師)の扮装(ふんそう)をさせて制作した連作の一点である。灰色、緑、青、バラ色といった色彩が精妙な変化を見せる背景や床に対し、衣装の赤と黒のコントラストが引き立っている。人物の顔や手の細部は幅の広い筆触によって単純化されており、仮面のような表情は、連作の中でも抽象化の度合いが高くなっている。

人物の頭部と足先が切られた構図からは、人物と空間の関係に対する画家の飽くなき研究の痕がうかがえる。(県近代美術館主任学芸員・澤渡麻里)



ポーラ美術館コレクション展は水戸市千波町の県近代美術館で18日まで。月曜休館。同館(電)029(243)5111

【写真説明】
ポール・セザンヌ「アルルカン」(1888〜90年 ポーラ美術館蔵)



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