2019年1月21日(月)

筑西の料理店20年 “地域の笑顔”励みに 親子3人、本格和洋中

独特な内装の店内。左から兄・猪瀬文俊さん、弟・林武人さん=筑西市伊佐山
独特な内装の店内。左から兄・猪瀬文俊さん、弟・林武人さん=筑西市伊佐山

毎年多数の店が誕生しながら、一方でまた多数の店が閉店するといわれる飲食業界。「実験的な」店だとリスクはさらに高まる。茨城県筑西市伊佐山の「ナチュラルセンスいのせ」もその一つ。和洋中それぞれの本格派料理人が、一つ屋根の下で腕を振るう珍しい業態。茨城の地方都市で成り立つのか、と疑問視する見方もあったが、既に開店から20年を経過した。存続の秘訣(ひけつ)は何なのだろうか。

「画一的な店とは違って、結果的には一つのビジネスモデルになったからだと思う」。中国料理を担当する猪瀬文俊(いのせふみとし)さん(48)は理由をこう分析する。弟で仏伊料理担当の林(旧姓猪瀬)武人(たけひと)さん(45)は「日本では和洋中混合の食卓が生活に溶け込んでいる。その食卓を本格料理で、という要望に応えた」と補足した。

兄弟は都内の一流料理店で修業を重ね、それぞれ台湾とフランスで腕を磨いた。そして和食部門は、やはり都内の一流天ぷら店で修業した父。親子で店を営むのは父の夢だった。まず父のそば店に猪瀬さんが加わり、1988年にいのせがオープン。4年後には林さんも合流した。

兄弟はさまざまな料理コンテストに応募し、何度も日本一に輝いている。著名なパティシエ・辻口博啓(ひろのぶ)氏には「コンテストあらし」との“称号”をもらい、コンテストに参加した同業者からは「またあの一族か」と皮肉られたことも。

「でも、それがかえって『敷居の高い店』のイメージを植え付けてしまったかも。東京ならそれでも需要はあるが」と、マイナスに作用したと猪瀬さんは明かす。そこで兄弟は「コンテストはもう出ない」と区切りをつけ、意外な新メニューに踏み切る。それは何と「飲み放題」だった。

「地方の店では宴会は命綱。いのせならではのコースをそろえた。でも『飲み放題やってないの?』と断られることも少なくなかった」と林さん。やらない理由はあった。飲み放題が主な目当ての宴会だと、料理をあまり食べてもらえないのではと考えたからだ。

だがそれは杞憂(きゆう)だった。宴席が酒ばかりになって場荒れすることはなかった。「宴会料理でも本格的でおいしい」という笑顔にいくつも出会えた。こうして飲み放題は確実に売り上げを伸ばしたという。

兄弟が「東京で通用する腕」ということは自他ともに認めるところ。そして「お客さまがもう少し食にお金をかけてくれれば新たな味に出合えるのに」との歯がゆさが正直2人にはある。

でもこうも思うのだ。「店を始めたころ、自分たちの料理はとんがっていた。これが本場の中国料理だ、フランス料理だと。だけど『おいしい』と言ってもらうのが私たちの仕事。それが本当の腕ではないのか。地元の人たちを笑顔にすることを、今は自分たちも楽しんでいる」(藤崎和則)

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