2019年2月26日(火)

窃盗症、高まる認知度 足りない治療機関 茨城県が研修会

県内自治体や司法関係者に向け、窃盗症治療や患者の声を紹介する赤城高原ホスピタル(群馬県)の竹村道夫院長=1月、水戸市笠原町の県精神保健福祉センター
県内自治体や司法関係者に向け、窃盗症治療や患者の声を紹介する赤城高原ホスピタル(群馬県)の竹村道夫院長=1月、水戸市笠原町の県精神保健福祉センター

■自助グループ活動も

衝動的に盗みを繰り返す「窃盗症」(クレプトマニア)という病気の認知度が徐々に高まっている。茨城県内では、県が1月、窃盗症をテーマとした研修会を開催。県内自治体や司法関係者が窃盗症に悩む男性の思いや、専門医の見解に耳を傾けた。患者同士が話し合うグループミーティングなど自助努力の取り組みも始まっている。ただ、治療機関が全国的に少ないなど課題も見られる。

■患者の思い

「スリルや後悔とともに、達成感があった」

研修会で窃盗症に悩む男性が自らの経験や思いを語った。

男性は3年前、会社員として営業職に就いていたが、会社から業績が認めてもらえず、「何をやっても達成感が得られない日々を送っていた」。そんなある日、スーツのズボンを万引。男性は「万引をしないと気が済まなくなった。万引を失敗した日は、なぜ成功できなかったのかと、それしか考えられなかった」と当時を振り返った。

男性は現在、治療のため月に1度、片道約2時間かけて通院している。「窃盗症を理解してもらうことは難しいが、少しでも実情を知ってほしい」と訴える。

■経験語り合う

窃盗症への認知度が次第に高まる中、悩ましいのが治療機関の少なさ。窃盗症ではないかと自認したとしても治療を受けられる機関がなく、一人で悩みを抱える患者もいる。

窃盗症の可能性がある患者を1700人以上診察してきた赤城高原ホスピタル(群馬県)の竹村道夫院長は、治療機関が少ない理由について「ノウハウの蓄積が少ない」と指摘する。

一方で、県内では昨年6月、患者による自助グループが作られ、患者同士が改善に向けて自ら努力する取り組みが始まっている。竹村院長によると、「刑務所に入り、逆に症状が悪化して出所した」と話す患者もおり、刑罰で改善できない実態がある。

竹村院長は「窃盗症は医師が治すというより、患者が経験を語り合うミーティングで回復するのが理想」と話し、グループミーティングの効果に期待する。

■刑罰よりも

窃盗症の診断は容易ではないが、特徴の一つとして、経済的状況や学歴、社会的地位などから理解し難いリスクを犯し、代償に見合わない万引を繰り返すことが多いとされる。

米国精神医学会による診断基準によると、患者は、その商品が特に欲しいわけではないのに盗もうとする衝動が抑えられない▽盗む行為に快感や満足感、解放感がある▽妄想や幻覚に反応したものではない-などとされる。

近年は刑事裁判で、刑罰より治療を優先する温情判決も出ているという。竹村院長は「患者の治療状況を司法判断に反映させる仕組みが必要」と訴えた。(吉原宗康)

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