2019年3月9日(土)

【東日本大震災・あの日から8年】福島県、孤立化防ぐ 県外避難先へ看護師派遣

不安解消へ寄り添う

女性が書いた日記には、「よろしくお願いします」の文字が涙でにじむ。夫への感謝がつづられていた=水戸市内
女性が書いた日記には、「よろしくお願いします」の文字が涙でにじむ。夫への感謝がつづられていた=水戸市内

東京電力福島第1原発事故で福島県から本県に移った避難者には、いまだ心のケアが必要な人もいる。事故から8年を迎えるが、将来への不安などで古里と避難先という二重の悩みを抱える。こうした状況に、福島県は県外避難者の自宅に精神科看護師を派遣する無料の健康相談をスタート。孤立化を防ぐ取り組みが続く。

■日記に涙にじむ

日記の一部がにじむ。横には「涙」の文字。

「泣いて字がにじんでしまった」

同県双葉町から水戸市に避難した女性(58)が振り返る。2017年1月、市内に移っていた夫(58)が脳出血で倒れ、一時意識不明に。後遺症で失語症や半身まひが残った。

日記は夫が倒れた当日から一日も欠かさず、10冊目に上る。涙でぬらした頃は、入院する夫を毎日見舞っていた。

同町は福島第1原発が立地する。町職員だった女性は、役場機能が移転したいわき市のアパートに1人で暮らし、夫婦は離れ離れになった。夫を介護するため女性は同年3月、役場を退職した。

夫は現在、施設に入所しながらリハビリに励んでいる。意思表示できるまで回復し、週末は外泊許可を取って自宅に戻り、夫婦で過ごす。ただ、障害がある夫との生活に女性は「地域の一員として暮らしていけるのか」と不安を募らせる。

■「自分を大切に」

もう一つ、女性には割り切れない悩みがある。元の自宅は避難区域内にあり、近隣住民は帰還を諦め、家を相次いで解体した。自身も現状、帰ることは厳しいと感じている。

築約20年の家で2人の息子を育てた。「人生のいい時期を過ごせた」と言う。家族の幸せが詰まった場所を更地にするか答えは出ていない。

そんな時、同県が精神科看護師による訪問を始めた。女性は1月下旬に約1時間、先行きの不安をこぼした。

「まずご自分を大切に、自分の時間を大切にしてください」。看護師の言葉に救われた。病気と闘う夫を前に、自分は楽しんでいいのか後ろめたさがあった。

今月、県内避難者の支援ネットワーク「ふうあいねっと」のシンポジウムをスタッフとして手伝った。別の日には元同寮たちとカフェを満喫した。以前ならためらっていたが、看護師の言葉に背中を押された。

訪問事業について、女性は「専門職だから遠慮なく自分をさらけ出せる」と感謝する。

事業は同県から委託された日本精神科看護協会が昨年11月、全国各地でスタート。看護師が血圧測定などをしながら困り事を聞く。避難者が深刻なうつ状態などの場合は、医療・支援機関につなげる。

■家族不調が半数

同県はこれまでも避難者の多い10都道府県で相談窓口を設置してきた。だが避難者は各地に散り散り。全国をカバーすることはできなかった。同県の担当者は「県内避難者よりも、県外避難者の心の状況が良くなかった」と説明する。

茨城大が昨年秋、本県への避難者を対象にアンケート調査したところ、「家族に精神面の不調や体調悪化」が「いる」と答えた人が約半数いた。前回16年調査と変わらなかった。多くは「よく眠れない」「気分が落ち込む」「肩、首が凝る」などを訴えた。約3割は「精神的な不調」で治療・通院していると答えた。

調査責任者で「ふうあいねっと」代表の原口弥生教授は「本年度になって心の不調を訴える人が増えたように感じる。支援者や地域が見守りを続け、避難者本人や家族を孤立させてはならない」と話した。(斉藤明成)



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