2019年5月6日(月)

小澤征爾さんら来店、憩いのそば屋、水戸芸術館近くの「萬庵」 43年の歴史に幕

夫婦二人三脚、築いた味 名物メニュー考案

43年の歴史に幕を閉じる「そば処 萬庵」=水戸市泉町
43年の歴史に幕を閉じる「そば処 萬庵」=水戸市泉町

水戸芸術館に近い水戸市泉町1丁目の飲食店「そば処 萬庵(よろずあん)」が6月20日、閉店する。ご当地ならではの「納豆ざる」を生み出し、同館長でもある指揮者の小澤征爾さんやアーティストらが足を運んだ名店。開業から43年にわたり夫婦二人三脚で歩んできたが、新市民会館建設のため移転が必要となり、後継者がいないことから閉店を決めた。店主の永島匡さん(76)は「店を一緒に育ててくれたお客さまに感謝したい」と話している。

■納豆ざる人気

昼時の店内。常連や顔見知りの客が続々と入店し、そばやうどん、丼など40品以上あるメニューから思い思いの品を注文する。そば・うどん打ちなどは永島さんが担当し、調理と接客は妻たみ子さん(69)が担当。せわしなく働く姿は開業以来変わらない光景だ。

同店は、永島さんが同市の日本料理店の実家から独立し、1976年12月27日に向かいのビルで開業した。料理について学んできたが、そば打ちは素人。ひたちなか市のそば屋「寿三角屋」で技術を教わった。「始めは大変だった。(自分は)負けず嫌いだから続けてきた」と振り返る。周辺に勤務する会社員や、芸術館の利用客などに親しまれてきた。

「納豆ざる」(900円)は、35年前に水戸の名物を使った新商品として考案した。コシのあるそばを、納豆や卵、大根おろし、キュウリ、刻みたくあんなどが入った付け汁で味わう。雑誌にも取り上げられ、近年は納豆ざる目当てに観光客が来店する。県外の客には観光地図を渡し、「全国から来る人に茨城県を見てほしい」と観光大使を自負する。

小澤さんは同館での公演のたび来店していた。30年来の付き合いで、温かい「とりそば」(750円)や、最近は「なべやきうどん」(1200円)をよく注文するという。公演時のエピソードなど「いろんな話をした」と笑う。

■6月まで営業

閉店は新市民会館の建設に向け、入居ビルが取り壊されるため。「後継者もおらず、移転してもいつまで続けられるか分からない」と決断した。たみ子さんは「自分たちの代でつくり上げた店。辞めるのはつらい」と打ち明ける。

創業当時から夫婦で利用する80代の女性は「大みそかは毎年、生のそばを買って親戚に配っていた。味だけでなく、2人の人柄もあって店に人が来ていた。さみしい」と惜しむ。水戸市の会社員、檜山三紀子さん(52)は「閉店は残念。昼休みにほっとする憩いの場だった」と話した。

3月末で閉店予定だったが、小澤さんの次回公演を待ち、6月まで営業を続ける。永島さんは「社会の流れの中、(閉店は)仕方ないこと。とにかく感謝の気持ちを伝えたい」と語った。(磯前有花)

「とにかく感謝の気持ちを伝えたい」と話す「そば処 萬庵」の永島匡さん(右)と妻たみ子さん=水戸市泉町
「とにかく感謝の気持ちを伝えたい」と話す「そば処 萬庵」の永島匡さん(右)と妻たみ子さん=水戸市泉町


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