2019年5月14日(火)

被ばく医療底上げへ 千葉・量研、基幹センターに指定 人材育成や診療、標準化

全国の高度被ばく医療5機関の医師らが参加した合同研修=千葉市
全国の高度被ばく医療5機関の医師らが参加した合同研修=千葉市

全国の被ばく医療の底上げに向け「司令塔」が発足した。原子力規制庁は4月、千葉市の量子科学技術研究開発機構(量研)を、全国に五つある高度被ばく医療支援センターの基幹施設に指定。早速、5機関合同で初めての原子力災害を想定した傷病者受け入れ研修を量研で実施した。全国の被ばく医療の従事者たちが連携を強め、人材育成のマニュアル作りや診療ガイドラインの標準化など、山積する課題に取り組み始めた。(報道部・三次豪)

■漂う緊張感

「患者も自分も汚染しないように」「傷の洗浄で使った水が垂れて床が汚染されているぞ」-。防護服を着た医師と看護師、放射線技師らの慌ただしい声が室内に響き渡った。

量研で10日行われた合同研修には、国内で高度な被ばく医療技術を持つ量研、弘前大(青森県)、福島県立医大(福島市)、広島大(広島市)、長崎大(長崎市)の医療従事者約30人が参加。原発の管理区域内で廃液タンクを清掃中に転落し、大腿(だいたい)部を負傷、汚染した作業員が搬送されたとの想定で行われた。

全員が被ばく医療の最先端機関で働く医師や看護師らだが、人形を使った研修では戸惑いと緊張感が感じられた。搬入の動線確認が入念に行われ、患者が運び込まれると、汚染が拡大しないよう声を掛け合って細心の注意を払い、汚染検査や傷口の拭き取り作業などを進めていった。

今回の研修は、2020年度に導入予定となっているマニュアル(共通テキスト)を試行する意味合いで実施された。

■4県が未指定

原発事故が起きた際、各地の被ばく医療体制で中核を担うのが「原子力災害拠点病院」。2011年の東京電力福島第1原発事故で被ばく医療が機能不全に陥ったことを教訓に、国は原発関連施設30キロ圏の24道府県に指定を義務付けた。

日本原子力発電東海第2原発のある茨城県では、県立中央病院(笠間市)、水戸医療センター(茨城町)、筑波大付属病院(つくば市)の3病院が指定されている。拠点病院で手に負えない場合、量研など全国5カ所の高度被ばく医療支援センターが対応する体制となっている。

しかし、4月2日現在で4県がいまだ拠点病院の指定に至っていない。背景に被ばく医療に精通した医師や看護師、放射線技師らが不足している事情があり、関係者は「統一した教育マニュアルがない」と人材育成遅れの一因を指摘する。

合同研修に参加し、統括リーダーを務めた福島県立医科大の長谷川有史主任教授は「(被ばく医療の)目的は同じだが、各施設の実情や能力には違いがある」と説明する。

■臨界事故が契機

わが国の被ばく医療体制は、作業員2人が死亡した1999年の東海村臨界事故をきっかけに、当時の放射線医学総合研究所などが中心となり整備が本格的に始まった。

茨城県には、30キロ圏に約94万人が暮らす東海第2原発のほか、廃止措置中の施設を含め数多くの原子力関連施設が立地し、被ばく医療の充実と備えは不可欠。2017年には日本原子力研究開発機構大洗研究所で、作業員5人が被ばくするプルトニウム汚染事故が起きている。

県疾病対策課は「体系立った研修ができるようになれば、人材育成と被ばく医療体制の強化につながっていくはず」と量研の基幹施設指定に期待を寄せる。



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