2019年8月29日(木)

映画「この世界の片隅に」 広がる共感上映1000日超

片渕須直監督 戦争下の日常に焦点 記憶の風化に危機感

映画や戦争への思いについて語る片渕須直監督=土浦市内
映画や戦争への思いについて語る片渕須直監督=土浦市内

太平洋戦争下の日常を描いたアニメ映画「この世界の片隅に」の劇場上映が千日を超えて続いている。観客は戦争を体験した高齢者から若年層まで幅広い年代に広がり、全国の根強いファンがロングラン上映を支える。メガホンを取った片渕須直監督が、連続上映が行われている土浦市内の劇場を訪れ、茨城新聞の取材に応じた。片渕監督は「戦時中にも何げない日常はあった。その日常を大事にしていこうと思った」と映画への思いを語った。

同映画は2016年11月12日に公開されて以降、上映が続くロングラン作品。広島県呉市を舞台に、戦況が悪化する中でも懸命に生きる若い女性・すずやその家族の生活を描いた。

片渕監督は、主人公が楽しそうにご飯を作る様子など、ごくささいな日常の風景を描いたことについて、戦争を体験していない若い世代にも「自分たちに(戦争が)無関係なものではないと考えてもらえるのでは」と思ったという。映画は戦争を体験した世代にも受け入れられ、「おばあさんから『あんな雰囲気でしたよ』と言われた」と回顧した。

映画は空襲や人々の死など戦争の悲惨さを強調したこれまでの戦争映画とは違い、何げない日常にフォーカスした。片渕監督は「戦時中のごくささいな日々にしていたことが、この映画によって意味を持つようになった」と意義を強調する。広島県を訪問したり、戦時中に書かれた日記を読んだりと、当時の人たちの日常を調べていくにつれ、「戦争体験は触れてはいけない世界と思われがち。だが、全然違う」と確信した。当時を生きた人々の日記には「花が咲いてきれい」「天気がよくすがすがしい」-といった表現があり、戦時中でもたくましく生きる市井の人々の日常を垣間見ることができたという。

片渕監督は「(自分の)おじいさんやおばあさんに戦争当時、何をしてどこに住んでいたのか聞いてほしい。戦争を身近に感じることができる」と訴えた。

戦後74年が経過した。戦争を経験した世代は減りつつある。片渕監督は戦争の記憶が風化することに危機感を表す。主人公と同じ世代を生きた高齢者から「(映画は)自分の存在証明です」という声を聞くこともある。

「映画に描いたものが真実だったと確認できる最後の機会になる。この大切な時期にこの映画を作れて良かった」。12月に公開される新作「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」でも思いを引き継いでいくつもりだ。(松原芙美)



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