2019年9月18日(水)

「一生免停」できるか あおり運転厳罰化検討で諸沢・元常磐大学長 法整備、明確な定義を

あおり運転を巡る法整備や、過熱した報道について語る諸沢英道氏=都内
あおり運転を巡る法整備や、過熱した報道について語る諸沢英道氏=都内

常磐自動車道のあおり運転殴打事件は、男が傷害容疑で逮捕されてから17日で1カ月。県警はあおり行為についても強要容疑で再逮捕し、厳重に取り締まっていく姿勢を示した。あおり運転そのものを取り締まる法律がなく、事件を機に厳罰化に向けた法整備の検討が進む。一方、事件では衝撃的な映像が瞬く間に広がり、関係のない女性が犯人としてさらされる問題も起きた。普及する屋外の録画装置や、あおりを巡る法整備、過熱した報道について、犯罪学などが専門の元常磐大学長、諸沢英道氏(77)に聞いた。

◆録画、負の面も

被害男性の車を追い抜き、前方に車を止めて行く手を阻む車。降車して運転席の窓越しに男性の顔を殴る男と、周辺で携帯電話を向ける女-。この様子を録画したドライブレコーダーの映像が決め手となり、男が8月18日、傷害容疑で逮捕された。女もこの男をかくまった容疑で逮捕され、後に犯人隠避罪で罰金刑を受けた。

防犯カメラやドライブレコーダーといった屋外の録画装置は、普及によって一定の犯罪抑止効果が認められる。ただ諸沢氏は「共存するデメリットが社会問題になり得る」と説く。憲法上は肖像権がないことから個人のプライバシーは保障されておらず、盗撮目的の設置だとしても「(盗撮行為を)立件できない可能性が大きい」とも指摘する。

◆多くは道交法違反

男は、数キロにわたり急な車線変更や減速を繰り返し、被害男性の車を無理やり停止させたとして、強要容疑で県警に再逮捕された。あおり運転は事故につながりかねない危険な行為だが、正面から取り締まる法律はない。神奈川県の東名高速で2017年6月に起きた夫婦死亡事件では、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)が適用されたが、多くは車間距離保持義務違反といった道交法違反。このため厳罰化に向けた法整備の検討が進む。

2001年の刑法改正でできた危険運転致死傷罪は構成要件が厳しく、適用例が少なかった。故意のある悪質・危険な運転という基準はあるものの「定義が不明瞭だった」と諸沢氏。あおり運転を巡る法整備でも同罪の失敗を繰り返す恐れがある。諸沢氏は「何があおりなのか明確な定義が必要」とし、「一番大事なのは本人が一生運転できないように免許を停止できるかだ」と指摘する。

◆便乗のメディア

一方、ドライブレコーダーの衝撃的な映像が流れたことで報道は過熱。逮捕前から映像が繰り返し流され、ネット上で犯人特定の書き込みも相次いだ。うその情報も拡散し、全く関係がない女性が犯人としてネット上にさらされた。

逮捕後も傷害事件として異例の過熱報道は続いた。男が取手署に移送された際、集まった報道関係者らは200人近く。「(殺人事件の)捜査本部が立つよりも注目されている」と話す捜査関係者もいたほどだ。

諸沢氏は「ネットやSNS(会員制交流サイト)で意見を発信できる社会になりつつあるが、一つの方向へなびく国民性になってきている。多方向の意見がない」と危険性を指摘。その上で「メディアもそれに便乗したような報道をし、国民をあおってしまっている」と苦言を呈した。(海老沢裕太郎)



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