2019年10月13日(日)

台風19号 豪雨 濁流 泥の街 「命あっただけでも」

大子 鉄橋倒壊、役場も浸水

泥かきに追われる商店街の人たち=13日午後3時25分、大子町大子、菊地克仁撮影
泥かきに追われる商店街の人たち=13日午後3時25分、大子町大子、菊地克仁撮影

東日本を縦断した台風19号の豪雨により、県内は久慈川と那珂川の堤防が決壊、濁流が大子町と常陸大宮市の住宅などに押し寄せた。前夜から救助を待つ住民は不安な一夜を過ごした。のどかな街や田園地帯が一変する様子に住民らは言葉を失った。多くの河川で水があふれ、住宅や店舗が浸水被害に見舞われた。

大子町は13日午前0時までの約9時間に計約270ミリの雨が降り、久慈川と支流が相次いで氾濫、町内に大きな被害をもたらした。久慈川に架かるJR水郡線の鉄橋が濁流に引きずり込まれるように倒壊、中心市街地に泥水が流れ込み、町役場は1階部分が水に漬かった。住民は「こんなに水が出るのは初めて」と苦渋の表情を浮かべ、自宅の片付けに追われた。

JR水郡線袋田駅北側の鉄橋「第6久慈川橋りょう」は、4本あったとみられるコンクリート製の太い橋脚が二つを残して倒れた。緑色の橋桁は陸地近くに一部が残ったほかは、引きちぎられるように川の中に落ちた。近くに住む会社員、藤田英夫さん(47)は前夜、久慈川の水が押し寄せ、家族と7月に開通したばかりの南田気大橋に避難した。強い雨が降る中、「すごい音がした」という。自宅1階は床上約80センチの浸水で、「こんなことは初めて。今まで水が来たことはない」と首を振った。

同じく近くに住む会社員、江尻智博さん(46)の長男(19)は水郡線を利用して水戸市内の大学に通う。「水郡線はいつ動くのか」と通学手段に懸念を募らせた。

町の中心市街地。同町大子の保内郷メディカルクリニックの桜山拓雄院長(73)は「朝来たら泥だらけになっていた」と疲れた表情を見せた。

前夜は当直医と看護師2人が残り、2階の入院患者18人と共に不安な一夜を過ごした。久慈川の水は午前0時ごろに院内に流れ込み、腰の高さまで達した。

1階には診察室や検査室などがあり、医療機器やカルテの一部が水に漬かった。「どこから手を付けていいか分からない」。断水となり、電話も不通。患者の送迎や在宅診療に使う車3台のうち2台が水をかぶった。それでも「14日からは当番医。できる限りの診療はしたい」と話した。

近くで整骨院を営む羽石勝さん(54)は、店舗兼住宅の1階が約1メートル50センチの高さまで水浸し。「こんな高さまでは来ないだろうと思っていた」。駆け付けた親戚や友人らと終日、畳や家財道具を運び出す作業に追われた。

鈴木孝弘さん(46)のクリーニング店も機械が水没。被害額は数千万円に上るかもしれず、今後が見通せない。ただ「命があっただけでも」とぽつり。

久慈川と押川の合流近くにある町役場は、両河川からの濁流による泥が駐車場を覆い尽くし、職員らが懸命に運び出していた。

町総務課によると、前夜午後10時ごろから押川の水が堤防を越えて流れ込み、同11時近くには約2メートルの深さまで冠水した。本庁舎の事務部門は無事だったが、生活環境課や農林課がある2カ所の分庁舎は1階が水没した。

このため、職員は早朝から庁舎の後片付け、担当する町内の巡回などに車を走らせた。避難所設置など住民の安全を最優先にしたが、高梨哲彦町長は「人命を第一にしたが、犠牲者を出してしまい、課題も残った」と話した。

役場庁舎はこれまで1986年、91年にも冠水。被害を避けるため、床を堤防より高くした新庁舎建設を計画。本年度内に着工して、2020年度末に完成する。(川崎勉、小原瑛平、蛭田稔)

久慈川に崩れ落ちた鉄橋。レールが大きくゆがんでいた=13日午前10時42分、大子町南田気、菊地克仁撮影
久慈川に崩れ落ちた鉄橋。レールが大きくゆがんでいた=13日午前10時42分、大子町南田気、菊地克仁撮影


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