2019年10月24日(木)

決壊 氾濫・台風19号豪雨 (上)
河川の防災

経験値超え弱さ露呈 同時多発への対策急務

浸水家屋から助け出され、久慈川から流れ込む水の中を歩く母娘=13日午前9時50分、常陸大宮市富岡
浸水家屋から助け出され、久慈川から流れ込む水の中を歩く母娘=13日午前9時50分、常陸大宮市富岡

台風19号は記録的な豪雨を伴って本県を縦断し、大雨特別警報が発令される事態となった。同時多発的に発生した堤防の決壊は、久慈川や那珂川など県内5河川12カ所に上った。越水なども含め、氾濫は計90カ所。死者2人、行方不明者1人、広範囲で甚大な浸水被害をもたらした台風19号を見詰め直す。

「まさか久慈川の堤防が壊れるとは…」。常陸大宮市富岡の砂川正一さん(62)は、自宅からやや上流地点の堤防が決壊したことに、がくぜんとした。

13日午前3時ごろ、けたたましいサイレン音が家の前で止まった。「(上流の)小倉の方から水が来ている。すぐに避難してくれ」。緊迫した様子の消防団員が家を訪れた。そう言われたものの、周囲を見ても水はどこにもない。砂川さんは妻と一緒に自宅裏手の堤防に上がった。水が堤防を越えるまでには、あと約1メートル。「まだ余裕はある」。その時はそう思った。

堤防から戻り、近所に向かおうとした妻が県道に出ると、暗闇の中を道路に沿って上流から水が迫ってきた。「逃げなきゃ」。砂川さん一家6人は慌てて家を離れる準備をし、車に分乗した。消防団から避難を促されてからわずかな間に、足元の水かさはくるぶしの上まで増していた。「ぎりぎりだった。命拾いした」。砂川さんの想定をはるかに超えていた。

■観測史上最大

混乱していたのは住民だけではなかった。

常陸大宮市と那珂市の計3カ所で堤防が決壊した那珂川。しかし「氾濫発生情報」が出されなかった。河川管理者の国土交通省関東地方整備局常陸河川国道事務所の職員は、13日午前4時半すぎの時点で越水を確認したが、氾濫発生情報を出さないまま約半日後の午後3時になって「決壊」を発表した。

整備局は直前に氾濫した久慈川の対応に人員と時間を割かれ、「現場が混乱していた」と釈明。赤羽一嘉国交相は「あってはならないこと。心からおわびしたい」と謝罪した。

水戸地方気象台によると、降り始めからの総雨量は北茨城市花園で462・5ミリ、常陸太田市徳田で339・5ミリと、24時間雨量で観測史上最大を記録。台風上陸当夜、水沼ダム(北茨城市)と竜神ダム(常陸太田市)は貯水が限界を超え決壊する恐れがあるとして緊急放流に踏み切り、水沼ダム下流の大北川では越水が起きた。

■難しい時代に

「これまでの経験値を超えている」。河川氾濫や土砂崩れを研究する茨城大の斉藤修特命教授は今回の台風19号を振り返り、大規模化する自然災害に国や自治体の対策が追い付かない現状に懸念を示した。

国は防災の公共工事を柱とした国土強靱(きょうじん)化計画を進めるが、今回の台風では、堤防のかさ上げなど補強工事が遅れている箇所や堤防がない場所で河川氾濫が起きた。「以前から“弱点”を指摘されていた箇所が多くあった。今回の豪雨でそれが露呈した」と語り、河川の防災対策が「急務だ」と訴える。

国管理の1級河川だけでなく、支川の決壊や越水の多発にも着目。斉藤教授は「中小河川は水位計が少なく、きめ細かく水位を測るのが難しい。支川の監視体制強化に向け、国の支援が必要」と指摘した上で、こう警鐘を鳴らした。

「今後さらに自然災害は大規模になるだろう。危険箇所をハザードマップに反映するのも難しい時代が来る。それでも対策をやらなければいけない」(三次豪、鹿嶋栄寿)



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