2019年10月31日(木)

台風19号農業被害 イチゴ農家 冠水施設、自ら修繕

年明け出荷に危機感 常陸大宮

実がなっても出荷できないイチゴの花芽を手にする都竹大輔さん=常陸大宮市野口
実がなっても出荷できないイチゴの花芽を手にする都竹大輔さん=常陸大宮市野口

台風19号は大雨や河川の堤防決壊で農業用施設や機械、作物にも大きな被害をもたらした。住宅や生活再建が優先的に必要な地域の農家では、業者の手が足りない中で周囲の協力を得て、一日でも早い復旧を目指し、徐々に片付け作業や農作物の手入れに当たっている。

常陸大宮市野口でイチゴを生産する都竹大輔さん(47)は、農業用ハウスが冠水し全ての苗が被害に遭った。泥水や汚れた葉を取り除くなど苗の手入れや施設の修繕作業を始めている。

那珂川の堤防が決壊した影響で、家族経営する都竹さんの農業用ハウスや直売所が全て冠水した。45アールの農地に立つ計20棟のうち2棟が全壊。イチゴ栽培は設備投資が高額とされ、トラクターなどの機械、灌水(かんすい)設備や予冷庫、冷房機や暖房なども含めた損害額は1400万円に上る。

10月下旬から始まる出荷を控え、イチゴは徐々に花や実を付け始めていた。苗の8割は無事だが、風評被害を出さないために、再度マルチを張り替えたり泥をかぶった花芽からは出荷を控えたりするという。クリスマスシーズンで単価の高い12月までの出荷ができず、都竹さんは「打撃は大きい」と話す。

灌水設備と電気系統が今月中に復旧しなければ年明けの出荷も危ういという。設備の修繕は業者に周囲の住宅被害を優先してもらったため自身で直し始めた。「何とか間に合わせたい」と言うが、今後も泥水をかぶったことで苗の病気発生の懸念が続く。

13年前に東京から家族で移住し、新規就農した。同市を初めて訪れた日に御前山の景色に一目ぼれし、その日のうちに役所で相談、仕事は農業を選んだ。

県農業経営士や市認定農業者の理事を務め、イチゴはアメリカ大使館で使用されるなど評価を高め、パートの年間雇用も進めてきた。今年、新しいトラクターを購入したり就農時の借り入れを返済し終えたことから、今度は地域の農業を支えようと、耕作放棄地対策として地域の農家で組織する農業法人の立ち上げを計画していた。「10年以内には動かないと地域の農業の維持に間に合わない」と危機感を持つが、その矢先の被害だった。

同市内のイチゴ農家6軒のうち冠水被害を受けたのは半数で、いずれも新規就農者だ。都竹さんはこれまで、補助金を利用せずに規模拡大してきたが「新規就農者はゼロから始めたので、農機具や設備の補償がなければ振り出しに戻ることになり厳しい。もう一度イチゴ農家のステージに立てるように支援してほしい」と願う。国と県、市町村は農業用施設や機械の復旧にかかった費用のうち4割を助成すると決めた。

浸水1週間後から、市が派遣するボランティアが延べ100人以上参加し、主に泥をかき出す作業を行った。泥は30トンを超え、さらに増える見込みだ。「お礼を言うたびにいつも涙が出そうになる」とこうべを垂れた。

「正直、(農業を)辞めるかどうかも考えた」と都竹さん。それでも、心配や協力をしてくれた人々を通じて気力が湧き、規模縮小や転作、土地を変えるなど何らかの対応をして続けるという。「本当はいっぱいいっぱい。でも、苗を生かして早くイチゴを作り、他にできることも探して恩返ししたい」と前を向いた。(大貫璃未)



次の記事:つくば市、個人情報89人分流出 

全国・世界のニュース

2020 年
 5 月 29 日 (金)

メニュー
投稿・読者参加
サービス