2019年11月14日(木)

台風19号襲来1カ月 不安抱えて (2)
苦悩

工場水没 見えぬ再建 機械全滅、厳しい資金

浸水被害に遭った常磐工作所。社長の藤咲充則さんが工作機械の被害状況を確認する=7日午前11時ごろ、常陸太田市松栄町、鹿嶋栄寿撮影
浸水被害に遭った常磐工作所。社長の藤咲充則さんが工作機械の被害状況を確認する=7日午前11時ごろ、常陸太田市松栄町、鹿嶋栄寿撮影

薄暗い工場内に金属を削ったり、切断したりする工作機械が並ぶ。新品であれば1台数千万円。ミクロン単位の精密さを持つ。

「分解して見ているが、奥の方まで泥水が入っている。工作機械は全滅だ」

常陸太田市松栄町の常磐工作所。社長の藤咲充則さん(58)は肩を落とす。

工場内はどうにか片付いたが、再建に向けた道筋は見えない。

途中だった受注品の製作に、ようやく取り組み始めた。部品の交換などで製作費はかさむが、その分の請求はできない。

平面研削盤や複合加工機など10台ある大型の工作機械をそろえ直せば、中古でも3千万円規模になる。

「使用頻度は低くても、機械がないと仕事にならない」

電動工具などを含めると、必要な資金は5千万円を上回ると見積もる。

「自力で全部やってくれと言われても…。行政の支援がないと、どうしようもない」


工場内の壁にはくっきりと泥の線が残る。地面から3メートル20センチもの高さだ。

台風19号の襲来翌日。夜明けとともに、約4キロ離れた市内の自宅から工場に来た。拍子抜けするほど何の被害もなかった。

状況が一変するのは数時間後だ。久慈川の上流部が決壊し、濁流が押し寄せた。久慈川と浅川の堤防に囲まれたこの地域の水位は急上昇した。

昼ごろ再び様子をうかがうと、周辺は海のようになっていた。工場の1階が完全に水没しているのが見えた。

水が引いた後、工場内は泥と稲わらで無残な姿に変わり果てた。トラックやフォークリフトも動かない。

泥水に漬かった金属部品は処分した。引き取り価格はわずか2万円にしかならなかった。

工作機械の重さはどれも1トンを超す。「処分しようにも搬出・運搬だけで数十万円かかる」。必要な資金ばかりが次々に頭に浮かぶ。


同社は父親が創業し、50年近くこの地で歩んできた。大学卒業後、別の会社勤務を経て同社に入り、24年ほど前に社長を引き継いだ。

工場の建て増しを重ね、工作機械を増やし、技術力で顧客の信頼を勝ち得てきた。

主力は高度なロボットなどの省力化機器。自身も含めた5人で、設計からソフト開発、製造までを担う。全てオーダーメードだ。

経営環境は厳しい。それでも「借金の返済を指折り数え、あと少しというところまで来ていた」。

まさか、あんな上流部から水が来るとは-。

会社を畳む選択肢はない。ただ、資金面の悩みは深く、今後に重くのしかかる。

「再建計画を作るにも助成が出るのかどうか、出るならどのくらいかが分からないと、どうしようもない」

得意先などとは3カ月ほど先の仕事の話をしている。「その頃には何とかしていないと…」

本格的な再開は来年を見込むが、明るい材料を見いだせない苦しい状況は当面続く。従業員の生活も守らないといけない。

苦境の中でふと笑みを見せ、絞り出すように、つぶやいた。「本当に困ると笑うしかない。泣くわけにもいかないし…」(川崎勉)



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