2019年11月17日(日)

台風19号襲来1カ月 不安抱えて (5)
困惑

堤防決壊、沈んだ自宅 途方もない修復作業

久慈川の水が押し寄せ、地盤が削られ家が傾いた広木賢さん。住宅再建に向け悩みは深い=8日午前10時55分ごろ、常陸大宮市小倉、鹿嶋栄寿撮影
久慈川の水が押し寄せ、地盤が削られ家が傾いた広木賢さん。住宅再建に向け悩みは深い=8日午前10時55分ごろ、常陸大宮市小倉、鹿嶋栄寿撮影

台風19号による大雨の影響で土台部分の地面がえぐり取られ、木造平屋建ての家屋が斜めに沈み込む。

「時間とともに、状況はひどくなっている。もう家の中には入れない」

常陸大宮市小倉の会社員、広木賢さん(47)は住み慣れたわが家の無残な姿に唇をかむ。

決壊した久慈川の堤防から自宅までは、30メートルほどしか離れていない。

兼業農家として大切にしてきた周辺の田や畑も砂利の混じった泥で覆われた。

「できれば同じ場所で自宅を建て直したいが…」

再建までの道のりは平たんではない。家屋を解体し、土盛りし直し、整地する必要があるためだ。

農地の修復を含め、費用の面で不安は尽きない。堤防の今後も気になる。

「一気に考えると、眠れなくなる」



曽祖父の代から約100年、この地で住み続ける。

被災した自宅は祖父が建てた。戦前の水害を教訓に、敷地は田畑より1メートル50センチ以上も土を盛り、自宅はさらに1メートル近く高い。

どっしりとした瓦屋根のこの家で生まれ育ち、結婚後も増築し暮らしてきた。

平穏な日常が暗転するのは10月13日未明からだ。午前1時20分すぎ、背後の堤防から水があふれ出す。家の中にいても分かった。

「水が堤防を越えてくる音が滝のように聞こえた」

消防団に促され、すぐに車に乗って避難所の大宮東部地区コミュニティセンターに向かった。背後の堤防から水が流れているのが見えた。

水が引き、午後になって自宅にたどり着いた。家屋内への浸水は免れたが、敷地内の地盤が数カ所、激しく削り取られていた。

地中に引きずり込まれた自宅はゆがんで傾き、先祖の位牌(いはい)や遺影、家族のアルバム、テレビなどを運び出すのが精いっぱいだった。

「諦めるしかない」。愛着ある住まいを失った。

妻、次男と3人で2週間、避難所で過ごした。同居していた両親は親戚方に身を寄せた。

あまりの惨状に、当初は何をやっていいか整理が付かなかった。自宅には立ち入れず、農機具などを置いた倉庫の片付け作業にいそしんだ。

市内の県営住宅に移り、家電や生活用品などを購入する中で、徐々に現実的な問題に直面する。

「お金がどんどん出ていく。この先どうなるのか」



真新しいトレーラーハウス型の木造の建物が並ぶ。同センター駐車場に市が設置した応急仮設住宅だ。

今月8日、市の担当者から鍵が手渡され、入居した。自宅から車で数分の距離。「近いので安心した」

水害への怖さはあるが、あの場所で再び暮らしたいとの気持ちは強い。

「まずはどうやって家を解体するか。一つずつやっていくしかない」

自宅や農地などの再建に向け、費用との兼ね合いもあり、結論はまだ出ない。2人の息子とも相談しながら検討するつもりだ。

仮設住宅の入居は2年。判断までの猶予期間が少しできたと捉えている。

「前を向いていかないと、どうしようもない」(川崎勉)



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