2020年4月6日(月)

「日立のサクラ」後世に 官民連携活動本格化 樹勢点検や出前授業も

平和通りに並ぶソメイヨシノの花付きや樹木の状態をじっくりと見て回る日立市さくら課の職員と樹木医=同市鹿島町
平和通りに並ぶソメイヨシノの花付きや樹木の状態をじっくりと見て回る日立市さくら課の職員と樹木医=同市鹿島町

美しく咲き誇る「日立のサクラ」を後世に残すため、茨城県日立市は行政と市民が協力して守り育てる活動を本格化させている。工業都市として発展した市の歴史とともに植えられたサクラは、近年樹勢の衰えが深刻化。市は昨年、「さくら課」を新設し、樹木の点検や更新、市民と連携した保護育成の体制づくりを進めている。「日立らしさ」を象徴する市のシンボルに位置付け、市民の意識醸成も図りながら、官民連携により次の世代へとつなげていく。(日立支社・湯浅奈実)

▽日常管理

淡いピンクの花びらが柔らかな風に揺れ、春の訪れを告げている。

名所の平和通りとかみね公園のサクラは、植栽から60年以上のものが目立ち、サクラのトンネル喪失や倒木の危険性が高まっている。市はこうした課題を解決するため、昨年7月、都市建設部内にさくら課を設置した。

同課は平和通りやかみね公園、鞍掛山、十王パノラマ公園を重点管理地区とし、樹木の保護や段階的な植え替えを行っている。かみね公園内では日立紅寒桜の拠点作りに着手した。

学校や企業、公共施設などのサクラは各管理者と連携し、剪定(せんてい)や施肥など保全方法をまとめたリーフレットを配り、日常管理について助言する。

市所有の施設にある全ての樹勢点検にも乗り出した。2019年度は小中学校や幼稚園などの約1100本の点検を終えた。現状把握を急ぎ、樹勢回復や更新に取り組む。

▽公害克服

未来を担う子どもたちに市とサクラの関わりを知ってもらおうと、同課の職員や樹木医による出前授業も始まった。1月には樹齢100年を超すソメイヨシノがある市立助川小で試行的に実施。今後は全小学校への拡大を目指す。同課の湯田健一課長は「関心を持ってもらい、ふるさとの誇りとして語れる財産にしたい」と意気込む。

専門の課を立ち上げ、まちづくりの観点から市全体のサクラを保全する取り組みは全国でも珍しいという。小川春樹市長は「公害を克服し、他とは違う日立らしいサクラを大切にしたい」と力を込める。

▽体制強化

市内には長年、サクラの植栽や保護を続けてきた市民団体が複数ある。

市は20年度、これまで単独で活動していた団体のほか、自治組織「コミュニティ」や企業の関係者、有識者などを一元化するため、「市さくらのまちづくり市民会議」を再編し、体制の強化を図る。

27年前から活動する「花樹の会」は、市民有志が助川山やかみね公園での植樹・育成を続けてきた。鈴木邦男会長(77)は「仲間との活動は生きがい。市や他団体と協力して、共に進めていく」と話した。

2月には地元の樹木医が新たに「日立さくら研究会」を立ち上げた。約15人のボランティアが中心となり樹勢診断の実施や市民向けの育成講座開催を予定する。代表で樹木医の田柳健太さん(41)=日立市=は、市内全体の樹勢の衰退に危機感を示す。「手をかければサクラの寿命は延びる。日常的に水をやるなど、みんなで取り組むことが重要だ」。見頃を迎えた平和通りのサクラを見上げて強調した。

★日立市のサクラ

1915年に大煙突を建設して煙害克服を目指した日立鉱山の角弥太郎が中心となり、枯れた山々にオオシマザクラなど約500万本を植林したのがはじまり。平和通りは51年に戦争復興事業としてソメイヨシノが植樹され、現在127本が並ぶ。かみね公園は53年から地元有志が植栽を始め、約25種類、約1000本のサクラが見られる。両所は90年に日本のさくら名所100選に認定された。同市には「日立紅寒桜」など3種類の固有種がある。



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