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《新型コロナ》土浦のスナック 苦境、踏み出す一歩 2カ月ぶり営業再開 「待っている人のため」

スナック店内のカウンターを消毒して来店客を待つ経営者の篠田清美さん=土浦市桜町
スナック店内のカウンターを消毒して来店客を待つ経営者の篠田清美さん=土浦市桜町


新型コロナウイルス拡大防止の休業要請が全て解除され、スナックなど接客を伴う店舗の営業が本格的に再開した。2カ月にわたる休業で「顧客離れ」を不安視する声は根強く、先行きは見通せない。苦しい状況の中、県内指折りの繁華街を抱える土浦市内のスナック経営者は「待っているお客さんのために店を開けたい」と一歩を踏み出した。

土浦市の繁華街「桜町」の一角にある「スナックどじ」。9日夜、4月の休業から2カ月ぶりに本格的な営業を再開した。経営者の篠田清美さん(65)は「ようやく自粛が解除された。でも、すぐにお客さんは戻らない」と先を見通す。常連客に会員制交流サイト(SNS)で連絡を入れ、来店を呼び掛ける。

5月までの売り上げは前年の1割に満たなかった。「こんなのは初めて。生活費にもならない」。篠田さんはため息をつく。在籍する従業員女性9人は、自粛の影響が広まった後、ほとんど出勤していない。篠田さんは育てた野菜や弁当を届け、つながりを保ってきた。

店を始めて26年。来店客は土浦市内をはじめ、つくば市、石岡市に及ぶ。千葉や東京からゴルフ客や接待客も訪れていた。手作り料理を提供する篠田さんを慕う客が多く、「家庭的な雰囲気が好きで長くいる人が多い」。

コロナの影響で状況は一変した。外出自粛で客が減少。緊急事態宣言後は、人件費や家賃、カラオケのリース代などが固定費としてのしかかった。休業補償を申請したが「穴埋めにはならない」。家賃を引き下げてもらい、国の緊急融資利用を検討している。

休業中、店のドアに「営業を自粛します」と張り紙をした。その上から「つぶれろ」と心ない落書きをされた。「コロナは人の心も壊す」と感じた。

全国で営業自粛が解かれた後、東京・新宿の歌舞伎町など歓楽街で感染者が再び増えている。

篠田さんは「感染は怖い」と不安を感じつつ、客の前ではマスクを外し、距離を取るようにして接客する予定だ。店内は客が帰るたびに消毒する。「客商売なのでお客さんを信頼するようにしている」と語る。

再開してもすぐに状況が好転するとは思えない。それでも「お客さんとのつながりを大事にしてやってきた。一歩一歩進んでいくしかない」。持ち前の温かい笑顔で、篠田さんは来店客を迎えるつもりだ。

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