2020年9月10日(木)

常総水害5年 (下)
《連載:常総水害5年》(下)災害への備え 田んぼダム研究進む

事前に役割分担、職員派遣

熊本県での被災支援活動を報告する常総市市民と共に考える課の渡辺高之課長補佐=8月、同市役所
熊本県での被災支援活動を報告する常総市市民と共に考える課の渡辺高之課長補佐=8月、同市役所

豪雨や台風で河川が氾濫するなどした際、水田に一時的に雨水をためることで水害の被害を軽減する「田んぼダム」の研究が、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、つくば市)で進められている。

水田はあぜや道路に囲まれていることから、雨水を一時的にためて、ゆっくりと川に流す洪水防止機能があり、下流域の浸水被害リスクを低減させる効果が期待される。田んぼダムはその機能を利用し、排水口に水量を調節する板を設置。堤防の整備やダム建設、河川改修に比べ即効性があり低コストなのが特徴だ。

ただ、効果を発揮するには耕作者との連携が欠かせない。長期間にわたり多数の農家に取り組んでもらうことが不可欠で、実現には高いハードルもある。

常総市内の農家の男性は「被害軽減に効果があるなら協力したいが、長期間となると稲作への影響も気になる」と懸念する。

県内では今のところ目立った動きはないが、宇都宮市や米どころの新潟県、山形県など普及への取り組みは全国で進みつつある。

大規模に取り組むほど効果は大きいことから、水田を管理する農家の協力をどう広げ、維持していくかが課題となる。農研機構の皆川裕樹主任研究員は「地域ごとに効果を検証して、(耕作者に)説明していくことが大切」と強調する。

■貴重な財産
8月中旬、常総市役所の会議室。7月の豪雨で大きな被害を受けた熊本県に派遣された市職員が幹部らを前に活動報告会を行った。被災地で学んだ教訓を共有することで、同様の被害に備えるためだ。

「(災害時に)市職員がどの業務をするか、あらかじめ決めておく必要がある」。7月9日から15日間、同県芦北町や球磨村など球磨川流域の自治体で災害廃棄物処理の助言や情報収集に当たった、市市民と共に考える課の渡辺高之課長補佐は訴えた。

水害で鉄道の線路にがれきが漂着した様子を写真などで紹介し、被害の深刻さを報告。現地での活動を通して、「(市役所での日常業務を)日頃から磨くことが災害時には重要になると感じた」と話した。

渡辺さんのように災害対応の経験が豊富な人材は、自治体にとって貴重な財産となる。災害ごみの処理を巡っては環境省が年明けにも、ノウハウを持つ自治体職員をリストに登録し、災害時に現地へ派遣する「人材バンク制度」の運用を始める方針。

■「風化させない」
常総水害から5年を迎えるのに当たり、同市の神達岳志市長は「防災への危機感を風化させないことが大切」とあらためて強調。被災した苦い経験を踏まえ、他の被災地への職員派遣などにも力を入れてきた。

鬼怒川の治水対策については、国の緊急対策プロジェクトが最終年度を迎え、ハード面の復興はおおむねめどがついた。ただ、同市では、住民の自主防災組織の結成率が6割に達していないことなどソフト面の対策はいまだ道半ばだ。

神達市長は「今後の災害に備え、引き続き防災力を強化していきたい」と力を込めた。



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