茨城県北ロングトレイル事業 “夢の里山道”整備着々 豊かな自然、気軽に楽しむ

県北ロングトレイルのコースを整備するボランティアたち=18日、大子町大生瀬
県北ロングトレイルのコースを整備するボランティアたち=18日、大子町大生瀬
現在検討されている「県北ロングトレイルコース」のイメージ図。太赤線がコース。点線はエントランスルート。●は駅やバス停。(県北振興局提供)
現在検討されている「県北ロングトレイルコース」のイメージ図。太赤線がコース。点線はエントランスルート。●は駅やバス停。(県北振興局提供)
茨城県北地域の6市町にある里山や観光地を全長約320キロの道でつなぎ、歩いてその魅力を満喫してもらう県の「県北ロングトレイル」事業が、大きな一歩を踏み出した。構想から約5年。本年度中の一部開通を目指し、9月から愛好家ら有志のボランティアたちが草刈りなどを行う森林整備を開始した。広大な県北地域の豊かな自然を気軽に楽しめる“夢の里山道”の整備が着々と進み、地元も観光振興などへ期待を寄せる。

■唯一無二の宝
「天気がいいと日光や那須の山々が見える。とても良い眺望ですよ」

青々とした山々を見渡し、同事業の構想に関わったアウトドア専門店「ナムチェバザール」(水戸市)社長の和田幾久郎さん(53)は笑顔で遠くを指さした。

18日朝、大子町大生瀬の月待の滝近くのりんご園駐車場で、和田さんは集まった約20人のボランティアたちにこの日の整備ルートを説明。本年度中の開通を目指すのは、同所付近を入り口とする通称「大子アルプス」の約10キロのコース。草刈り機や枝切りばさみを手に、使われないまま草木が生い茂った山道を切り開いた。

「派手さはないが魅力が多い。点在した資源をつなげたらパワーが出るのではないかと思った。東京から日帰りできる距離にこのような自然がある県北は、茨城県にとって唯一無二の宝」。和田さんは、県北を歩きながら構想を浮かべた当初の思いを振り返った。

■6市町をつなぐ
同事業を巡っては、2018年に県や地元6市町(日立、常陸太田、高萩、北茨城、常陸大宮、大子)と、和田さんら愛好家が研究会を立ち上げ、ロングトレイルの魅力や課題などを勉強してきた。昨年度、正式に事業化され、県が和田さんに事業委託。コース設定などに取り組んだ。

山や海、川、滝などの自然の景勝地から歴史的遺構、里山や古い街並みなど、魅力にあふれた県北地域。大子町の男体山や八溝山、袋田の滝、月待の滝、常陸大宮市の鷲子山上(とりのこさんしょう)神社、常陸太田市の竜神峡、日立市の御岩神社、高萩市の花貫渓谷、北茨城市の花園神社などを“一筆書き”でつなげる計画となっている。

事業名の「県北ロングトレイル」はまだ仮名で、正式名称の案や道標などに使うデザインロゴの制作は、筑波大芸術系の学生らが現在取り組んでいる。

■魅力掘り起こし
豊かな自然にあふれた県北地域だが、一方で課題もある。特に大子町は少子高齢化が顕著で、高齢化率は県内トップの46%。急速に進む人口減少にどう立ち向かうか、簡単に答えは見つからない。

こうした状況の中、地元の魅力を改めて掘り起こし、多くの人を呼び込める可能性のある同事業に、地元も大きな期待を寄せる。

同町は、秋のリンゴ狩りや紅葉のほか、四季折々の自然や食、温泉などを楽しめる。町商工会の大藤博文会長(69)は「サイクリングで『つくば霞ケ浦りんりんロード』の人気が出たように、県北ロングトレイルにも非常に期待している。地元の魅力発信と活性化につなげるため、コース整備後も、地元のわれわれも一緒に“味付け”を考えていきたい」と語った。

県北地域の将来を見据えながら、和田さんは「外から来る愛好者だけでなく、地元の人も地元の価値を感じられる起点となるような事業にしたい」と意気込む。

県県北振興局の担当者も「全てのコース整備の終了まで何年かかるか分からないが、地元の皆さんの協力を得ながら距離を延ばしていきたい」と話した。

★ロングトレイル
「歩く旅」を楽しむために作られた道。登山とは異なり、登山道やハイキング道、自然散策路、里山のあぜ道を歩き、地域の自然や歴史、文化に触れることができる。日本ロングトレイル協会によると欧米発祥で、国内でも近年、健康や自然への関心が高まり、コース整備や計画が各地で進む。信越トレイル(80キロ、長野県飯山市)や高島トレイル(80キロ、滋賀県高島市)がある。

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