「厄介者」イノシシ有効活用、ジビエ料理に 茨城県議長ら提案、食用へ体制整備模索

作業工程を説明する那珂川町(栃木県)イノシシ肉加工施設の職員=同町和見
作業工程を説明する那珂川町(栃木県)イノシシ肉加工施設の職員=同町和見
イノシシ肉のシチューとメンチカツ(左から)
イノシシ肉のシチューとメンチカツ(左から)
■昨年1万1400頭捕獲
農作物を食い荒らす「厄介者」のイノシシを有効活用し、茨城県特産の「ジビエ(野生鳥獣肉)料理」として普及させたい-。県議会の常井洋治議長と石井邦一副議長がこう提案し、県と共同でプロジェクトを進めている。県によると、昨年1年間に県内で捕獲されたイノシシは約1万1400頭に上るが、食用として出荷されたのはわずか約10頭。商品としての消費はほぼない。農作物被害を解消しながら、新たな特産品創出につなげようと、捕獲イノシシの活用へ体制整備を模索する。

■唯一の加工施設
県内では、イノシシ肉処理加工施設として唯一、「朝日里山学校」(石岡市)が稼働するが、他市町村に加工施設はなく、捕獲イノシシ1万頭以上がそのまま処分されている。地元の猟友会が運営する朝日里山学校の施設でも、昨年度に市内で捕獲された約千頭のうち、出荷は地元の「しし鍋会」会員店舗への約10頭のみ。猟友会が自家消費したものもあるが、それ以外は処分されている。

県内では福島第1原発事故の影響で出荷制限が続いているが、検査で放射性セシウムが1キログラム当たり100ベクレルを下回れば出荷が認められている。県によると、県内のイノシシで基準値を超えたのは2016年の1頭が最後。ただ、出荷可能でも需要が低いままで、出荷につながっていない。

■出口戦略で実績
一方、隣の栃木県では先進的な取り組みが進む。那珂川町は2009年からイノシシ肉処理加工施設を稼働させ、販売につなげる“出口戦略”にも力を入れ実績を上げている。八溝山系地域で捕れた「八溝ししまる」として特産ブランド化。町内の飲食店でシシ丼やシシそばなどとして提供し、全国各地のジビエ料理を提供するフレンチレストランなどにも出荷する。

同施設の19年度の売り上げは約1630万円。同町と近隣5市町から捕獲イノシシ444頭が搬入され、そのほとんどの423頭が検査を通過して出荷された。ばら肉や肩ロースなどの上質な部位以外もジャーキーに加工するなど、余すところなく活用する。

先進事例に学ぼうと、先月24日、常井議長と石井副議長は県担当者とともに、同施設を視察した。放射線測定器や冷凍車を見た後、解体から加工まで行う作業場を見学。捕獲後の迅速な血抜きや搬送、解体、加工と無駄のない流れの作業工程について、施設担当者から説明を受けた。

視察後は、イノシシ肉を使ったシチューやメンチカツを試食。常井議長は「茨城では捕獲したほとんどを処分している状況でもったいない。うまく処理すれば臭みも全くなくおいしい。シシ鍋としてだけでなく、那珂川町のように活用したい」と話した。

■市町村アンケート
県は、市町村による新たな処理加工施設整備を視野に、本年度中に市町村にアンケートを実施する予定。県自然環境課の担当者は「施設整備の意向や、販売につなげる出口戦略なども含めてご意見を聞き、手を上げた市町村とともに勉強しながら一緒に良い形を作っていきたい」と話す。

構想が実現すれば、農作物の被害軽減に加え、県産品化による地域活性化、狩猟者の収入増による捕獲意欲向上も期待できる。常井議長の地元笠間市、石井副議長の地元大子町でも、ともに年間千頭以上のイノシシが農産物被害の駆除を目的に捕獲されているという。石井副議長は「一石三鳥になる。『困った』を『良かった』に変える仕組み作りをしたい」と意気込む。

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