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布川事件再審無罪・桜井昌司さん「冤罪生まない社会を」 講演や執筆、余命宣告も活動精力的

講演する桜井昌司さん=4月末、都内
講演する桜井昌司さん=4月末、都内
桜井昌司さんの著書「俺の上には空がある 広い空が」(マガジンハウス提供)

1967年に茨城県利根町布川で男性が殺害された「布川事件」で再審無罪となった桜井昌司さん(74)は、末期がんで余命宣告された「1年」を過ぎた現在も精力的に活動している。講演を定期的に続けて自身の体験を振り返り、冤罪(えんざい)が生まれない司法改革を訴える。29年間の服役生活から今の心境をつづった本を先月刊行し、自慢の歌声を収めたCDも発売した。「冤罪被害者と共に声を発信して、社会を変えたい」と語る。

4月末、都内の会議室にはお気に入りの作務衣(さむえ)姿の桜井さんがいた。静岡県の「袴田事件」を支援する市民団体が主催した講演会に呼ばれ、無実の罪を背負った体験を1時間半にわたって話した。

桜井さんは共犯とされた杉山卓男さん(2015年死去)とともに、1996年の仮釈放まで29年間を獄中で過ごした。2011年に再審無罪が確定した。

「午前9時前から晩まで『おまえが犯人だ』『(事件現場で桜井さんを)見た人がいる』『証拠がある』と責められる。これが本当につらい」

桜井さんは取り調べを振り返り、犯行を認めた経緯を明かした。

4月に発売した著書「俺の上には空がある 広い空が」では、自供した理由について「自分はやっていないのだから、取り調べをしていけば、おのずと無実は証明されるはずである。あの頃の私は司法システムを信頼しきっていたのだ」と記している。同書のタイトルは、刑務所内で再審無罪を信じた時の思いだ。

再審無罪後の国家賠償訴訟で東京地裁は、桜井さんを現場付近で見たという「目撃証言」について警察官の虚偽とし、検察の証拠開示拒否もそれぞれ違法と認定した。

桜井さんは月1回程度の講演をこなし、冤罪防止策を提言している。捜査機関に対する要望は「うそを言うな、証拠をでっち上げるな、無実の証拠を隠すな、これだけ」と強調。証拠捏造(ねつぞう)や改ざんに加担した警察官、検察官の処罰や、第三者機関での証拠保管などを求めている。

19年9月、桜井さんは「ステージ4」の直腸がんが見つかり、肝臓への転移も判明。20年2月に余命1年と宣告された。ただ、今年2月の血液検査で「がんは正常値に戻った」。毎朝5時からの散歩が日課で、体調は良好という。講演会の最後には発売中のCDに収録された曲を披露し、元気な様子をアピールした。

国賠訴訟は6月25日に控訴審判決を迎える予定だ。「勝っても声を上げることはやめない」と言い切った。

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