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人手不足深刻 保育士「休憩取れず」 給料未払い訴訟発展も

記者会見で労働環境の過酷さを訴える原告の保育士たち=東京・霞が関の厚生労働省
記者会見で労働環境の過酷さを訴える原告の保育士たち=東京・霞が関の厚生労働省

保育士から休憩が取れないとの訴えが相次いでいる。園児の手が離せないまま一日中トイレに行けなかったり、園児のお昼寝中に事務作業をこなしたりしても「休憩」とみなされ、給料未払いの請求訴訟に発展したケースもある。労働時間に見合った休憩を事業者が確保しなければ違法となるものの、背景には保育士不足によるぎりぎりの人員体制などがあるようだ。

7月上旬、東京・霞ケ関の厚生労働省記者会見室。茨城県常総市の認可保育園「さくら保育園」に未払い残業代を求める訴訟を起こした原告の保育士のうち、3人が記者会見に臨んだ。20代の女性保育士は「人員不足と施設不備、休憩もなくてサービス残業もある。勤務内容の過酷さから集団退職の危機に直面した」と訴えた。この女性は現在も同園に所属し、勤務を終えて会見に参加した。

20代保育士は「トイレは朝7時に家で行ったきり、園ではタイミングを失って夕方4時まで行けず、ぼうこう炎になった。そもそも休憩という概念がない状態」と話す。30代女性保育士も「よその保育士からも似たような話を聞いた。私たちの保育園だけで起きていることではない」とこぼす。

運営者の社会福祉法人「石下福祉会」を水戸地裁下妻支部に提訴したのは同園の保育士など7人(うち5人は退職)。訴えによると、7人は就業規則で決められた休憩時間1時間がほとんど取れず、園児の見守りや書類作成などに追われた。日常の残業に加え、休憩分を含めた時間外労働手当として計約1052万円の支払いを求めている。

原告の保育士は労働組合「介護・保育ユニオン」(東京)に加入し、園側に未払い残業代を要求してきた。組合の申告に基づき、労基署は休憩を確保できる体制をつくるよう同園に指導票を出しているという。

会見に同席した同ユニオンの三浦かおり共同代表は「組合に寄せられる相談のほとんどは休憩が取れないという内容で、保育業界に共通する課題」と強調する。例として、昼寝中の子どものそばで事務作業をした時間が休憩とみなされたケースを挙げる。

休憩が取れない背景を三浦代表は「人員が圧倒的に足りず、職員の配置基準を守っていても人手はぎりぎりの状態だ」と指摘する。

茨城労働局によると、県内の5月の有効求人倍率1.33倍に対し、保育士は2.50倍で、人手不足の状況がうかがえる。

茨城新聞の取材に社会福祉法人側は「担当者が不在のため答えられない」としている。

■保育外職員配置を
茨城キリスト教大文学部長、飛田隆教授(幼児教育学)の話 2016年の「保育園落ちた」の匿名ブログをきっかけに待機児童問題が全国的な課題となった。併せて保育士の賃金が全産業より10万円程度低いなどの処遇も報道された。保育士は命を預かる責任ある仕事のわりに給料は低い。厳しい処遇が注目され、なり手が敬遠した結果、保育所は増えるのに保育士が足りなくなった。賃金アップなど処遇改善はもちろんだが、解決に時間を要する。園側がすぐに取り組める施策としては、掃除など保育資格のいらない業務を担う「用務員」のような職員の常勤配置だ。保育士の仕事を減らして8時間労働に見合った働き方に改善するべきだろう。

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