あした信じて 台風19号2年 (中)
《連載:あした信じて 台風19号2年》(中) 続く苦境

片付いた工場内で水害2年を振り返る常磐工作所の藤咲充則社長=常陸太田市松栄町、鹿嶋栄寿撮影
片付いた工場内で水害2年を振り返る常磐工作所の藤咲充則社長=常陸太田市松栄町、鹿嶋栄寿撮影
■工場再建 コロナの影 新たに借金、先行き不安
穏やかな秋の日差しが降り注ぐ茨城県常陸太田市松栄町。稲刈りシーズンを終え、のんびりした雰囲気に包まれる。

久慈川と浅川に挟まれた場所に立つ常磐工作所。塗り直した光沢のある緑色の床面が、窓からの光を反射する。

「すっきりした。大掃除ができたと思うしかない」。工場内を見渡しながら、社長の藤咲充則さん(60)は笑みを浮かべる。

2年前、1階が完全に水没し、浸水は2階事務所まで達した。工場内に洪水被害の痕跡は見当たらない。

泥水に漬かった10台ほどの大型工作機械は、思い切って半数を処分した。必要な機械は中古で購入したり、修理したりした。仕事仲間から譲ってもらったものもある。

「水害の方は完全に元通りになった」

台風のニュースには敏感になった。ただ、進路が気になっても、どうしようもない。「水が二度と来ないことを願うしかない」

今、影を落とすのは新型コロナウイルスだ。先が見えぬ苦境が続く。

■数カ月、収入ゼロ
高度なロボットなど省力化機器が主力製品。オーダーメードで作り上げる。

半世紀前に父親が創業し、25年ほど前に代替わりした。工場を建て増しし、機械類をそろえ、高い技術力で堅実な経営に徹してきた。

台風19号襲来から一夜明けた2019年10月13日。当初は平穏だったが、久慈川上流部の決壊で、気付けば濁流が押し寄せていた。

工場内に残った泥の線は高さ3メートル20センチ。全てが水に漬かり、大型工作機械はほぼ全滅した。

平面研削盤、円筒研削盤など、ミクロン単位の精密さが求められるだけに、中古でも購入費はかさむ。

「他に頼むと意図したものになるかどうか不安がある。そのための設計にも手間がかかる」

被災から1カ月が過ぎたころ、電動工具類などを含め、不可欠な機械をそろえるには数千万円規模の資金が必要と見積もった。

流れ込んだ泥と稲わらをかき出し、洗い流す日々。取引先は「こんな状況だから」と待ってくれたが、完成し納入しなければ支払いは受けられない。

「2、3カ月はほとんど収入ゼロ。預貯金を切り崩してしのいだ」

融資の保証に絡むやりとりは難渋した。それでも行政や地元商工会などの支援があり、再建に向けた道筋がついた。

返済完了が目前に迫っていた借金は「返し終わる前に増えちゃった」。見積もりよりは減らしたものの、新たな借金を背負った。

■2年前より厳しい
被災半年後の20年春。片付けと仕事の並行状態から脱し、本格的に再始動する態勢が整った。

だが、新型コロナが忍び寄った。ものづくりの現場に連鎖的な打撃が及ぶ。

「生産設備は最初に影響が出て、戻るのは最後と言われる。じわじわと来た」

感染拡大の波が1年半にわたって繰り返され、終わりは見えない。得意先の動向が読めず、かつてない不透明感に表情は曇る。

「手元にある仕事が終わったら、その先があるかどうか分からない」

水害に続くコロナ禍。自力では避け切れない苦難が重なる。絞り出すようにつぶやいた。

「(水害直後の)2年前より、今は厳しい」

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