《リポート》北茨城市 「複合防災」センター稼働 住民避難、良質な炊き出し 復興後仕上げ 安心安全な場所づくり

住民が避難できる多目的ホールを設けた「複合防災・学校給食センター」=北茨城市磯原町磯原
住民が避難できる多目的ホールを設けた「複合防災・学校給食センター」=北茨城市磯原町磯原
茨城県北茨城市が東日本大震災からの「復興の総仕上げ」(豊田稔市長)と位置付けていた「複合防災・学校給食センター」が完成し、9月から稼働している。10年前に地震と津波で大きな被害を受けた同市は、復旧とともに住民の命を守る対策を進め、復興関連事業が一段落した。災害を乗り越えた同市がこれらの資産を今後どのように生かし、新たなまちづくりにつなげるかが課題となる。

▽旧給食センター

同市役所隣接地にある同センターは、建設から約40年が経過して老朽化が著しかった旧給食センターの代替として建設。加えて、災害時には住民の避難や炊き出しができる防災機能を兼ね備える。

大部分は調理施設だが、コメ、飲料水の備蓄倉庫、自家発電機などを設けた。災害時には設備を活用し、良質な炊き出しを行えるのが特徴だ。震災当時、多くの市民が市役所に避難し、職員が夜通しおにぎりを握り、炊き出しをした経験が生かされている。多目的ホールには50~60人が避難できる。

建設には復興交付金などを活用した。豊田市長は「復興というのは、プラスアルファして安心安全な場所を多くつくり上げていくこと。職員が研さんして予算要求し、センターができたのはこの上ない喜び」と話す。

▽一本の路線

2011年の震災で同市は、沿岸部に津波が押し寄せ甚大な被害を受けた。市内全域の家屋被害は全壊188戸、半壊1336戸、一部損壊4720戸に上る。

市は12年3月、震災復興計画を策定し、復興事業や防災対策を進めた。

住民の意向を受けて平潟、磯原の2地区で高台への集団移転を決定。大津、中郷各地区を加えた5カ所に計9棟144戸の災害公営住宅を整備した。津波の直撃を受けて市場建物の解体を余儀なくされた大津漁港では、荷さばき施設や急速冷凍施設などがそれぞれ完成した。

耐震性や老朽化の問題を抱えていた施設の更新も一気に進めた。市民病院は同市大津町から同市関南町関本下の高台に移転し、建設から約40年が経過していた市立図書館を建て替えた。庁舎が被災し、地盤沈下に見舞われた旧消防本部も高台に新築移転した。

豊田市長は「一本の路線に集約することができた。ここまで10年間走り切った」とかみしめる。

▽教育や健康に力

住民が円滑に避難できる環境も整備した。津波避難道路で浸水エリアの外に逃げる「水平避難」、高台避難公園や津波避難タワーで「垂直避難」をそれぞれ可能にし、「命を守る行動」を促す。

残る大型事業は、新たなごみ処理施設の建設だ。現在の清掃センターは稼働開始から40年以上が経過して老朽化が進んでいることに加え、震災で発生した災害ごみの処理が施設に負担をかけた。市は高萩市と共同で北茨城市中郷町小野矢指地区にごみ処理施設の整備を進めており、工事を急ぐ。

復興を超えた今後のまちづくりについて豊田市長は、教育環境の整備や市民の健康づくりに力を入れていく方針を示した。

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