千葉ともこさん(水戸)が2作目小説 中国・唐が舞台の歴史長編 10日発売

新作「戴天」の発売を控える作家の千葉ともこさん=水戸市内
新作「戴天」の発売を控える作家の千葉ともこさん=水戸市内
10日に発売される千葉ともこさんの新作「戴天」
10日に発売される千葉ともこさんの新作「戴天」
■3月に茨城県庁退職 心機一転、再出発

水戸市在住の作家、千葉ともこさん(43)=茨城県阿見町出身=の新作小説「戴天(たいてん)」(文芸春秋)が10日に発売される。千葉さんにとって松本清張賞を受賞したデビュー作に続く2作目で、中国・唐の時代を舞台にした歴史長編だ。3月いっぱいで20年務めた県庁を退職。心機一転、再出発したタイミングでの新刊に、千葉さんは「『勇気』を伝えられたら」と語る。

■手紙がきっかけ

「自分が勇気づけられたことを書きたかった」。新作は、人の宿命に立ち向かう英雄たちの物語。舞台は唐の玄宗皇帝の時代。絶対的権力者にあらがおうとする若者や、理不尽な世の中を変えようとする若い僧の戦いを描いた。

松本清張賞に輝いた「震雷(しんらい)の人」で2020年9月に作家デビュー。同作も唐の話で、戦乱の世を生きる兄妹の話だ。書籍化後、読者から「勇気をもらった」という内容の手紙を受け取ったという。「デビューしたてで不安だった時に、作者本人が勇気づけられた」と感謝する。「もらった勇気を倍にして返したくて、2作目を書き始めた」

■組織に染まらず

これまで県職員と二足のわらじで活動していた。4月から専業作家の道を歩む。「県庁で20年働き、官民問わず、いろんな人を見てきた。心が折れそうになることもあったが、勇気づけてくれた人がいた」と振り返る。

これまでの体験を小説に入れ込んだ。「自分にとって『うそのないもの』を書いたつもり」。退職については「一つの組織に入っていると組織の考え方に染まる。実は、作家デビューできなくても一度組織を離れようとは思っていた」と本音を語る。

■追い続ける

新作は「勇気」とともに、自身が追い続けるテーマである「個の力」にも迫った。

「自分の作品全てに共通するテーマは、個の力だと思う。歴史の大きな流れや同調圧力、1人では立ち向かえないような大きなものに対して、個というものは、どうしたらいいのか。そういうものを今後も書いていきたい」

「個の力」は、どこまで通用するのか。自身の境遇と併せ、今後も作品の中での表現に挑戦していくつもりだ。

6月7日には加筆修正した前作が文庫化される。3作目の執筆も、すでに始まっている。

「戴天」は四六判で376ページ、1980円。

■ちば・ともこ
1979年生まれ、阿見町出身。土浦一高-筑波大日本語・日本文化学類卒。県職員として勤める傍ら、2020年に「震雷の人」(文芸春秋)で第27回松本清張賞を受賞してデビュー。22年3月末で県庁退職、専業作家に。水戸市在住。

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