最高位範士2人誕生 水戸東武館

剣道範士の高山陽好さん(右)となぎなた範士の榎戸二三枝さん(左)=水戸市北見町の水戸東武館
剣道範士の高山陽好さん(右)となぎなた範士の榎戸二三枝さん(左)=水戸市北見町の水戸東武館
■剣道 高山さん「後に続く人材育てたい」/なぎなた 榎戸さん「次世代へ競技の魅力を」
1874年の創設以来、「文武不岐(ぶんぶふき)」の精神の下、伝統文化である剣道やなぎなた道、居合道の修練を重ね、伝承に努めてきた水戸東武館(水戸市北見町)。剣道となぎなたで今年5月、最高位の称号「範士」が2人同時に誕生した。剣道範士の高山陽好さん(78)=水戸市=は「感激している。指導してくださった先生や仲間に感謝」、なぎなた範士の榎戸二三枝さん(73)=茨城県桜川市=は「これまで関わった皆さんに『おかげさま』という思い」と、それぞれ喜びを語った。

同館によると、これまでも範士を輩出してきたが、一つの道場で両競技同時に合格者が出るのは全国的にも珍しいという。

高山さんは小学3年から剣道を始めた。実家は剣道具店。この道に入るのは「必然だった」。水戸一高時代は、県選手権で個人連覇や団体優勝を経験し、明治大進学後も、インカレで団体準優勝を果たした。県警に入り刑事部長や水戸署長を歴任。退職後は小学生から大人まで幅広い世代の指導に当たる。合格率1%未満とされる八段は54歳で合格。「日々剣道と向き合ってきた」

範士は実績や経験だけでなく、「人格徳操高潔なる者」が求められる。加盟団体の選考や推薦を経て審査会に臨み、手にできる最高位の称号だ。県剣道連盟の名誉会長も務め、「長い間、修行をしてきて光栄なこと。後に続く人たちを育てたい」と思いを込める。

榎戸さんは22歳でなぎなたの道に飛び込んだ。茨城県のレスリング振興に大きく寄与した沼尻直さん(故人)との出会いがきっかけだったという。学生時代、スポーツに取り組んだ経験はなく、仕事やレスリングに対する沼尻さんの活力あふれる姿に触発され、「何かをやりたい」と仕事の後に道場通いを続けた。

剣道の大先輩たちに稽古をつけてもらってめきめきと上達し、10年もたたないうちに全日本選手権を制した。審査会も全て一発合格。この春に全国で24人(5月現在)しかいない範士となった。

茨城県だけでなく、国体のアドバイザーコーチなど、全国各地で指導に努めてきた。今はコロナ禍で自粛を余儀なくされ、それでも「各地の仲間と手紙でやりとりしたり、本を読んだり、競技を見つめ直す時間になった」と前向きに捉える。

範士となったことで競技普及への思いも一層高まった。「なぎなたに触れる機会を増やし、次世代に競技の魅力を伝えていきたい」と笑顔で語った。

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