茨城 最低賃金増 歓迎と懸念 労働者「助かる」/経営者「板挟み」

県内最低賃金推移
県内最低賃金推移
最低賃金の上昇が見込まれる中、物価高騰の影響に苦慮する干し芋の製造工場=ひたちなか市烏ケ台
最低賃金の上昇が見込まれる中、物価高騰の影響に苦慮する干し芋の製造工場=ひたちなか市烏ケ台
茨城県の最低賃金は過去最大の時給32円引き上げ、911円で答申された。物価高で家計が圧迫されている労働者は歓迎する一方、厳しさを増す中小企業経営者は価格転嫁できるか悩み、支援を訴える。賃金上昇で就労時間を制約しかねない配偶者控除や社会保険料免除などの適用基準見直しを求める声も広がりを見せる。

ひたちなか市の干し芋製造販売、幸田商店で働くパート従業員、磯崎充代さん(70)は野菜や食用油、しょうゆなどを例に挙げ、「日用品の値段が上がっているので、最低賃金が上がるのはうれしい」と笑顔を見せる。

同社の鬼沢宏幸社長(60)は「家計はインフレに直面している。引き上げは理解できる」としつつ、「企業としては大きな負担。板挟みになっている」と複雑な心情を率直に話す。工場や直営店で働くパート従業員の人件費は、今回の引き上げにより、年間数百万円増えることになる。

干し芋は健康志向の高まりに加え、コロナ禍の巣ごもり需要で人気が増し、同社の売り上げはここ数年、10%以上の増加が続く。しかし、足元では「利益が伴わなくなっている」(鬼沢社長)。イモを乾燥させるために使う灯油や包装用の袋など、燃料、資材、原材料の急激な値上がりが経費を押し上げている。

9月にも商品の値上げに踏み切る方針だが、売れ行きへの影響を考えると、コスト上昇分をそのまま価格に反映させるわけにはいかないという。

同社は少しでも経費を削減しようと、工場建屋に太陽光パネルを設置する検討を始めた。燃料代や電気代などの上昇について、鬼沢社長は「何らかの形でサポートしてほしい」と話し、政府や自治体による支援拡充を求める。

■別の問題も

牛久市の串揚げ店「まことや」の店主、小日山信さん(50)は「引き上げは大事だが、ほかにも見直すべきことがある」と、配偶者控除や社会保険料免除などの適用基準見直しの必要性を指摘する。

配偶者控除は年収103万円未満、社会保険料の免除は130万円未満が条件で、アルバイトやパートで働く人の就労の制約となる場合もある。収入が増えても扶養にとどまろうとする従業員が就労時間を減らせば、企業はその分の人手を別に確保する必要に迫られる。

食品スーパーで1日4時間働くひたちなか市の斉藤純子さん(46)は子ども2人の部活動の用具代などがかさむため、「収入が増えるのは助かる」。ただ、時給が上がれば、年間の収入は配偶者控除対象に収まらなくなる可能性がある。今後は出勤日を減らすなど、「調整が必要になるかもしれない」と話す。

同店のパート従業員でフルタイムで働く同市の仲條美幸さん(51)は、最低賃金の上昇を歓迎しつつ、働く時間を減らす人が増えた場合、「その日勤務する一人一人の負担が増すなど別の問題が生まれないか心配」と複雑な表情を見せた。

■溝埋まらず

茨城地方最低賃金審議会は5日、最低賃金を時給32円上げ、911円とするよう茨城労働局に答申した。中央審議会の目安31円を1円上回った。審議では、引き上げを主張する労働者側と、経営への影響を訴えて慎重な使用者側の溝が埋まらず、多数決で決まった。

結果に大井川和彦知事は「栃木県など近隣県との格差是正に至らず、十分な引き上げ額とは言えない」として、さらなる引き上げの働きかけへ意欲を示した。栃木地方最低賃金審議会は同日、目安に沿って31円上げ、913円と答申した。

最低賃金は異議申し立て期間を経て、10月1日から適用される予定。

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