「教育旅行」観光の柱に 茨城県内誘致が本格化 県と企業連携 強み生かす体験型

地域住民の指導を受けながら、かやぶき屋根に使うかやを整える鎌倉学園高の生徒たち=石岡市太田
地域住民の指導を受けながら、かやぶき屋根に使うかやを整える鎌倉学園高の生徒たち=石岡市太田
茨城県の豊かな自然や最先端の科学技術を生かした「教育旅行」の誘致が本格化している。中小旅行会社4社が立ち上げた社団法人は、里山や湖沼での体験と生産者、科学者との対話の場を提供。利用した首都圏の学校は「生徒の人生設計への大きな糧となる」と評価する。県は「将来的に観光の柱の一つとなり得る」として積極的に連携する。

誘致を推進するのは、一般社団法人「森と未来の学校」。水戸市の旅行会社「アーストラベル」などが中心となり設立した。同社はコロナ禍を機に、約63億円の市場規模を持つ首都圏の学校を呼び込もうと、体験型の教育旅行プログラムを提案。昨年初めてモニターツアーを行った。

4校が誘致に応え、ツアーに参加した。このうち、鎌倉学園高(神奈川県)は7月中旬、1泊2日で探求学習を実施した。初日はつくば市の農業法人や高エネルギー加速器研究機構で、農作物の出荷現場や加速器を見学。翌日は石岡市八郷地区で、かやぶき屋根のかやを整える作業などを体験した。

県フラワーパーク(同市下青柳)では、火おこしを体験。施設周辺で採取した木くずなどに火打ち石と同じ原理の道具で火をおこすと、生徒たちは驚き、笑顔を見せた。同校関係者は「コンパクトな地域の中で多様な体験ができる」と満足。12月にも同じ訪問先で探求学習を行うという。

同法人が自信を示すのは多様な学習コンテンツだ。経験豊富な漁師や有機農業に取り組む農業者など、自らの仕事にこだわりや情熱を持った約15人に協力を依頼。生徒たちに仕事を体験してもらい、生産者のありのままの姿や生の声に触れてもらうことで、従来の修学旅行などと差別化し、効果的なキャリア教育としてアピールする。

受注できれば数十人以上が来県するため、まとまった利益と地域への還元が見込める。学校側の信頼を得られれば、リピート率が高いのも大きなメリットだ。約2時間で行き来できる地理的環境を生かし、首都圏にある学校への講師派遣も提案する。

課題は需要拡大に向けた学習コンテンツの一層の拡大。「生産や研究に関わる人の思いを聞き、児童生徒に生きた体験をさせたい」とする学校側の要望はさまざまで、オーダーメード型の受注体制を整えてきた同法人は「茨城の教育旅行」定着に向け、さらなる訪問先の開拓を図る。

体験型観光を推進する県は「茨城県の強みを生かせる」として、同法人に全面的に協力。県東京渉外局PR・誘致チームを通じて都内の旅行会社や学校に直接売り込むほか、今後の事業拡大を見越して同法人のノウハウを茨城県の別の旅行会社に伝え、賛同者の拡大を図る。

県デスティネーションキャンペーン推進室の菊池克実室長は「これからは地元の素材を使って観光客を呼び込みたい。きちんとコンテンツを相手に届ければ、大きなビジネスになる」と強調する。

「茨城の魅力」を知った児童生徒が将来、進学先や就職先の選択肢に茨城県を入れることにも期待。アーストラベルの尾崎精彦社長(45)は「事業を継続的に続けることで、後継者不足の1次産業就職や科学者の道につながってほしい」と話した。

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