茨城・土浦・保育男児死亡 人員配置、施設従わず 行政、厳しい措置遅れる

男児が死亡し事業停止命令を受けた認可外保育施設=土浦市蓮河原新町(画像の一部を加工しています)
男児が死亡し事業停止命令を受けた認可外保育施設=土浦市蓮河原新町(画像の一部を加工しています)
茨城県土浦市の認可外保育施設で7月30日、生後7カ月の男児が死亡した問題は、保育士を必要数配置しない違反が明らかとなり、県が緊急の事業停止命令を出す事態となった。市は立ち入り調査に基づき再三指導してきたものの、施設側は「保育士が確保できない」と従わず、問題を認識しながら行政の厳しい措置は遅れる結果になった。施設が夜間働く女性の子どもたちの受け皿になっており、こうした施設が足りない事情も見えてきた。

■3回立ち入り
30日午前0時ごろ、同市蓮河原新町の認可外保育施設「ゆうゆう託児園」の寝室で、男児がうつぶせの状態でぐったりしているのを施設の従業員が気付いた。男児は病院に搬送され、同日、死亡が確認された。

施設は2006年9月に開業し、主に午後5時から翌日未明まで子どもを預かっていた。

市と県は児童福祉法に基づき、他の施設と同様に立ち入り調査。運営の問題点が目立つようになり、市は18年に抜き打ちの立ち入り調査に臨み、保護者が迎えに来ず数週間預かり続けている園児を確認した。夜間の保育士配置違反もあった。昨年12月にも立ち入り調査し、今年2月に指導を通知した。

しかし、保育士不足などの改善が見られず、3月に再度立ち入り、4月に指導、5月に事業者からの回答を得た。それでも行政側は「改善が不十分」と判断した。ただ、行政処分を前提とした厳しい通知は7月25日。男児死亡の直前だった。

市保育課は「18年や今年2月の指導を受け、速やかに強く勧告する必要があったかもしれない」と、対応の遅れを示唆した。

施設の園長(73)は取材に対し、「自ら夜間の補助者に入り、17年間もやっている。他の保育士よりも大丈夫」と説明。市と県の指導にも同様の主張を繰り返していたという。

■夜間2カ所のみ
同市内では認可外5、認可11の施設があるものの、夜間預かりを受けるのは2施設にとどまる。ゆうゆう託児園は、歓楽街などで夜間働く女性たちが子どもを預ける受け皿となっていた。もう一つの施設は不定期運営だった。

死亡した男児の母親(24)は「ここしか預ける所がなかった」と声を落とす。

店舗関係者は「安く、いつでも受け入れていた」と明かす。一方、認可外施設の関係者は「保育士や従業員の確保は難しく、人件費を考えても夜間運営は経営的に厳しい」と話す。

■県内、過去にも
市は受け皿のなくなった保護者のため、別の施設の利用を案内している。別の事業者が夜間受け入れの施設設置を目指す動きもある。

県内では16、18年にも水戸市内の同じ認可外保育施設で夜間の乳児死亡事故が発生。これを受け、県は20年に古河市、今回の土浦市で施設の事業停止命令を計3件出している。

県は今後、専門家による検証委員会を開き、結果をまとめる。県子ども未来課は「事案を検証し、再発防止に努めていく」としている。

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