静岡・通園バス置き去り死 茨城の幼稚園、安全どう確保 対応を模索

園児が降りた後に通園バス内を点検する保育士(右奥)と運転士=つくば市小野崎
園児が降りた後に通園バス内を点検する保育士(右奥)と運転士=つくば市小野崎


■登園管理 点呼徹底
静岡県牧之原市の認定こども園で3歳女児が通園バス内に取り残され死亡した事件を受け、茨城県内の幼稚園や認定こども園が安全性をどう確保するか模索している。登園管理の手引きや園児の点呼を徹底するなど、対策を強化。国は全国一斉に点検調査し、安全対策を厳しくする方針だ。各施設からは「対策に絶対はない。人的ミスの防止に努めたい」といった声が上がっている。

■アナログ
つくば市小野崎のつくば白帆幼稚園では、毎朝3台の通園バスが計9コースを回って園児を運ぶ。バスには運転士のほか保育士が添乗し、名簿を見ながら園児一人一人を乗降させる。車内の席はあらかじめ決めておく。登園のたびに、必ず職員2人で車内を確認。残った園児や忘れ物がないかチェックし、新型コロナウイルス対策で消毒も施す。ベテラン運転士は「いすで横になって寝てしまう子もいて、前からは姿が見えなくなる。点検を怠ることはできない」と指摘する。

園児が欠席したり保護者が直接送ったりした場合は、電話で確認を徹底。クラスに入ると点呼し、目視で数える。登園していない子は事務室と共有する。「アナログだが、何重にも目で見て、職員同士がコミュニケーションを取る。確実にチェックするので見落としを防げる」。田上顕園長は強調する。

■思い込み
土浦市乙戸のひたち学院幼稚園では、登園管理システムや健康アプリを使い、パソコンやスマートフォンで園児の出欠をすぐ確認できる仕組みを取り入れている。ただ機械に頼り過ぎず、各教室の日報とシステムを照らし合わせて園児の出欠の漏れを防ぐ。

園児がバスのクラクションをお尻で押して鳴らす訓練も予定している。菊地隆之理事長・園長は「ミスはありうるという想定でマニュアルの確認、見直しも行う」と危機意識を高める。

県私立幼稚園・認定こども園連合会は、県内の加盟園187施設に注意を呼びかける通知を出した。事務局は「思い込みでヒューマンエラーは起きやすく、人の命を預かっていると意識してもらうよう一層注意喚起している」と説明。一方、幼稚園関係者は「園長が事務局も雑用も兼ねるような小さな園では、人員に余裕がない例がある」として、経営の安定や職員の負担増にも注意が必要と指摘する。

■統一基準
政府は、通園バスを所有する全ての幼稚園や保育所、認定こども園など約1万カ所の緊急点検を始めた。県内では県を通じ、市町村が調査する。主に、①欠席園児の連絡態勢②登園時の園児の二重チェック③バスへの職員同乗④マニュアルの見直し-があるかどうかを調べる。

土浦市は市内54施設を調査し、17カ所が通園バスを運行すると把握した。調査項目に関して市は「おおむねできている」としながら、二重チェックや有資格者の同乗などで改善の必要性を指摘。今後、指導に当たる予定という。

国は安全管理の統一基準となるマニュアルを10月中に策定し、バスの後部座席側への警報システムや安全装置の導入を促す。

県南地域の認定こども園の代表は「車内で人の動きを捉える検知センサーや安全装置導入は、補助や支援があると採用しやすい」と注文を付けた。

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