ドローン活用、幅広く 無人輸送や次世代農業 茨城県内市町村と企業連携

荷物を積んで霞ケ浦飛行へ出発する輸送用ドローン。自治体と企業が連携し実用化を目指す=かすみがうら市坂
荷物を積んで霞ケ浦飛行へ出発する輸送用ドローン。自治体と企業が連携し実用化を目指す=かすみがうら市坂
無人航空機・ドローンの活用が茨城県内自治体で広がっている。専門の運用会社と連携協定を結ぶほか、職員の操縦技術のレベルアップを進める。災害時の被害把握や広報PRでの利用に加え、物品輸送や農業での実用化へ実証実験に踏み込む自治体もある。来月には市街地を含む有人地帯での目視外飛行(レベル4)も解禁されるとあり、より幅広い事業への活用を模索する。

◆事業拠点を設置
今月2日、霞ケ浦。かすみがうら市と美浦村の湖岸から大型ドローンが飛び立ち、片道8キロを13分ほどで行き来した。重さ5キロの特産品の荷物を届けた。

運用したのは、ドローン運用会社、eロボティクス(本社福島県南相馬市)。湖上を飛行する実証実験を行い実用化を目指す。今後は物流の範囲を周辺自治体に広げるほか、気象観測、測量の利用増を見込む。

同社は今年、かすみがうら市に子会社を設立し、事業拠点を置いた。板羽昌之社長は「物流、農業、インフラ点検など多様なニーズがある。できるところから進めたい」と本格稼働に力を入れる。市はドローンを農業に活用する取り組みも進め、事業者と連携。補助制度も設けて支援する。

市は9日、同社や関連団体と包括連携協定を結び、ドローンを積極活用したまちづくりに踏み出した。宮嶋謙市長は「市内では高齢化や働き手不足といった課題がある。雇用や地域活性化にもつなげていきたい」と期待を込める。

境町も来年度、有人地帯での無人物流を視野に実証実験に乗り出している。

◆職員専門チーム
ドローン活用に当たって市町村は、職員の専門チームをつくったり、講習を受講して知識を深めたりと、人材育成を図っている。

石岡市は職員有志が2020年11月にドローンパイロットチームを結成。毎年増員して34人が活動する。災害時に被災した現場を撮影し、被害を速やかに把握するのが狙い。活用は公共施設の点検や農地確認、遺跡調査、観光向けの空撮にも広がり、40件を積み上げた。

下妻市も今年6月、市職員の特別チームを発足させた。

学習の場を提供するドローンビジネスラボラトリーつくば校(下妻市)は、操縦訓練の講習のほか、法令や気象、安全活用の知識習得を促し、自治体も受講している。専門の学校や企業は、拡大するドローン需要に応じて、機体販売やレンタル、利活用の請負、利用者向けの操縦法の教育を提供している。

◆安全面で高い壁
小型無人機の飛行について、国は住民や歩行者がいないエリアでの目視外飛行(レベル3)を認めている。国交省が今後、レベル4の飛行を解禁することで、ドローン物流が本格化する見通し。ただ、業界では、都市部上空での実用化はまだ安全面でハードルが高いと見ている。

ドローンの産業利用を後押しする一般社団法人「環境ロボティクス協会」(本部東京)の勝部善之事務局長は「いきなり都市部ではなく、まずは無人地域で実験や成果を積み重ねることが重要」と、地方での実用化の可能性を指摘する。その上で「企業による活用は建築土木業界を中心に進んでいる。自治体との連携が広がれば、適正な利活用や地域活性化に貢献できる」と強調した。

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