ネットや職場、差別今も 水平社 同和問題根絶求め100年

機関紙に掲載された被差別部落地名リスト訴訟の記事を読む県内出身の女性
機関紙に掲載された被差別部落地名リスト訴訟の記事を読む県内出身の女性
「人の世に熱あれ、人間に光あれ」-。日本で最初の人権宣言とされる「水平社宣言」の採択から今年で100年を迎えた。1世紀たった今も部落差別(同和問題)の言動は絶えず、インターネット空間で被差別部落を特定する動きもあった。茨城県内の当事者は「人権意識や啓発は高まる一方、同和問題は避けられている」と、タブー視され差別が見過ごされる風潮を危惧する。

■声上げられず

1922年3月、部落差別解消を目指し、被差別部落出身者が「全国水平社」を結成した。茨城県では牛久市を拠点にした作家、住井すゑ(1902~97年)の部落差別を題材にした長編小説「橋のない川」が有名だ。

県内の被差別部落出身の50代女性は、職場で差別的言動を目にしたという。同僚が被差別部落を指し、「あそこの地区はあれよ、土人よ」と発言した。女性が別の部署に移ると、異動先の同僚が「上司が同和地区の人を連れて来た」と言ったため、女性は「それは私です」と切り返したこともあった。

女性は部落差別解消の活動に参加する。「差別される人は何も悪くない。差別に対して仲間たちと団結して闘う必要があるが、多くは仕事など生活への影響を恐れ、声を上げられない。生きるために耐えている」と打ち明ける。

■原告おらず除外

部落差別の解消を目指す「部落差別解消推進法」が2016年に成立。それでもネット社会の進展で、部落差別はサイバー空間に浸食した。地名を特定されたり、該当地区を歩く動画を流されたりする。デマも飛び交い、「利権をあさっている」など書き込まれる。

16年には川崎市の出版社が、全国の被差別部落の地名リストをウェブサイトに掲載しようと企画した。これに対し部落解放同盟や当事者が差し止め訴訟を東京地裁に起こした。判決は一部の都府県を差し止め対象とした一方、茨城を含む原告のいない県は除外した。訴訟は双方が控訴した。

訴訟の二審で、茨城分の主張をまとめた部落解放同盟栃木県連の和田献一執行委員長は、原告として訴訟に加わりにくい事情について「部落出身者はいつ自分が差別のターゲットになるか不安で沈黙する」と説明する。茨城県で原告が名乗り出る動きもあったものの、最終的に断念したという。

女性は、性的少数者(LGBT)や障害者など、マイノリティーを取り巻く人権意識の高まりを感じる。その一方で、「日本特有の差別制度である同和問題はタブー視され、避けられている」と指摘した。

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