茨城町の住宅全焼 弟不明、出火40分前に会話 「火事怖い」悔やむ兄

茨城県内で10月下旬以降、7人が建物火災で死亡した。昨年1年間の建物火災による死者数の3割超に当たる。11月に茨城町の火災で弟が安否不明の男性は「火事は怖いものだと身をもって知った」とこぼす。男性の脳裏に焼き付いているのは、弟と交わした出火40分前の会話。「話し好きの弟だった。生きていてほしかった」と悔やむ。
「家から空に向かって、火が噴き上げていた。家内と一緒に名前を何度も叫んだ」。茨城町下石崎で11月16日午後5時ごろ、海老沢勇(いさむ)さん(74)方の木造平屋が燃えた。勇さんの兄、正夫さん(77)は親戚から知らせを受け、妻の信子さん(77)と共に車で4、5分ほどの現場に駆け付けた。「勇、勇、勇」。2人で名前を呼んだ。返事はなかった。
住宅は全焼。火災現場からは1人の遺体が発見された。勇さんとは火災後、連絡が取れておらず、水戸署は現場の遺体が勇さんとみて身元確認を進めている。
正夫さんは火災発生の40分ほど前、1人暮らしの勇さんから「灯油がなくなった」と電話を受けていた。勇さんは3、4年前に車を手放しており、買い物と通院は正夫さんや信子さんが送迎していた。
正夫さんが勇さん方に行くと、玄関に二つ置かれたポリタンクの片方は空だった。もう一つは15リットルほど残っていた。翌17日は勇さんの月1度の通院日。正夫さんは「病院の帰りに買って帰ればいいでしょ」と家に上がらず帰宅した。これが最後の会話となった。
17日午前、正夫さんは検視のため勇さん方を訪れた。「夕べは眠れなかった。火事は本当におっかない」とうつむいた。勇さんは石油ストーブを使う居間で洗濯物を干していたという。正夫さんは「ひもにかけていた洗濯物が落ちたのかもしれない」。
茨城町で生まれ育った勇さんは、かつて建設会社で働いていた。若い頃は埼玉県戸田市に15年間ほど働きに出ていたこともあった。趣味は釣りで、車を手放す前は涸沼によく出かけていた。
正夫さんは「一度話し始めると止まらないくらい、話し好きの弟だった」と寂しそうな表情を浮かべた。
正夫さんは3人兄弟の長男、勇さんは三男。県北地域に養子に出た次男は、交通事故で亡くなったという。正夫さんは焼け跡を見ながら、「残された兄弟だから生きていてほしかった。一番上が、一番後だ」と、弟たちを思い、静かに話した。
■茨城県内建物火災 1カ月に7人犠牲
10月21日にひたちなか市の事務所兼住宅の火災で2人が亡くなって以降、県内では11月16日までの約1カ月間に7人が建物火災で死亡した。消防庁の統計によると、2021年に県内の建物火災の死者は23人で、この1カ月の死者は昨年全体の3割を超える。火災が増える冬場は、より火の元に注意が必要となる。
県の消防防災年報によると、火気の使用頻度が高い冬季から春先にかけて火災が増える。16~20年の月別出火件数はいずれも12~3月が多い。全国的にも同様の傾向で、消防庁は11月9~15日を「秋の全国火災予防運動週間」と定め、住宅用火災警報器の設置などを呼びかけている。
消防庁の統計によると、21年に全国の出火原因で多かったのは、たばこ、たき火、こんろ、放火、電気機器と続く。
同庁は火災予防のため、寝ながらたばこを吸わない▽ストーブの周りに燃えやすいものを置かない▽こんろを使う際は火のそばを離れない▽コンセントはほこりを清掃し不必要なプラグは抜く-などを指摘する。
「家から空に向かって、火が噴き上げていた。家内と一緒に名前を何度も叫んだ」。茨城町下石崎で11月16日午後5時ごろ、海老沢勇(いさむ)さん(74)方の木造平屋が燃えた。勇さんの兄、正夫さん(77)は親戚から知らせを受け、妻の信子さん(77)と共に車で4、5分ほどの現場に駆け付けた。「勇、勇、勇」。2人で名前を呼んだ。返事はなかった。
住宅は全焼。火災現場からは1人の遺体が発見された。勇さんとは火災後、連絡が取れておらず、水戸署は現場の遺体が勇さんとみて身元確認を進めている。
正夫さんは火災発生の40分ほど前、1人暮らしの勇さんから「灯油がなくなった」と電話を受けていた。勇さんは3、4年前に車を手放しており、買い物と通院は正夫さんや信子さんが送迎していた。
正夫さんが勇さん方に行くと、玄関に二つ置かれたポリタンクの片方は空だった。もう一つは15リットルほど残っていた。翌17日は勇さんの月1度の通院日。正夫さんは「病院の帰りに買って帰ればいいでしょ」と家に上がらず帰宅した。これが最後の会話となった。
17日午前、正夫さんは検視のため勇さん方を訪れた。「夕べは眠れなかった。火事は本当におっかない」とうつむいた。勇さんは石油ストーブを使う居間で洗濯物を干していたという。正夫さんは「ひもにかけていた洗濯物が落ちたのかもしれない」。
茨城町で生まれ育った勇さんは、かつて建設会社で働いていた。若い頃は埼玉県戸田市に15年間ほど働きに出ていたこともあった。趣味は釣りで、車を手放す前は涸沼によく出かけていた。
正夫さんは「一度話し始めると止まらないくらい、話し好きの弟だった」と寂しそうな表情を浮かべた。
正夫さんは3人兄弟の長男、勇さんは三男。県北地域に養子に出た次男は、交通事故で亡くなったという。正夫さんは焼け跡を見ながら、「残された兄弟だから生きていてほしかった。一番上が、一番後だ」と、弟たちを思い、静かに話した。
■茨城県内建物火災 1カ月に7人犠牲
10月21日にひたちなか市の事務所兼住宅の火災で2人が亡くなって以降、県内では11月16日までの約1カ月間に7人が建物火災で死亡した。消防庁の統計によると、2021年に県内の建物火災の死者は23人で、この1カ月の死者は昨年全体の3割を超える。火災が増える冬場は、より火の元に注意が必要となる。
県の消防防災年報によると、火気の使用頻度が高い冬季から春先にかけて火災が増える。16~20年の月別出火件数はいずれも12~3月が多い。全国的にも同様の傾向で、消防庁は11月9~15日を「秋の全国火災予防運動週間」と定め、住宅用火災警報器の設置などを呼びかけている。
消防庁の統計によると、21年に全国の出火原因で多かったのは、たばこ、たき火、こんろ、放火、電気機器と続く。
同庁は火災予防のため、寝ながらたばこを吸わない▽ストーブの周りに燃えやすいものを置かない▽こんろを使う際は火のそばを離れない▽コンセントはほこりを清掃し不必要なプラグは抜く-などを指摘する。