「中学の制服買いに…」 夫「妻、全力で長男に愛情」 茨城・笠間の常磐線踏切母子死亡

女性と長男が亡くなった踏切前に手向けられた花束=笠間市小原
女性と長男が亡くなった踏切前に手向けられた花束=笠間市小原
「毎日の習い事に一生懸命。妻も愛情を全力で注いでいた」。茨城県笠間市小原のJR常磐線踏切で6日、普通列車と衝突し、軽乗用車の女性(50)と長男(12)が亡くなった。3カ月後に男子児童の中学進学を控え、事故当日は制服を買いに行く途中だった。突如失った2人に「夕方から3人で通学用の自転車を買いに行こうと話し合っていた」と夫(55)は感情を抑えるように語った。

「運気のいい日に制服を買いに行くんだ」。女性は、そう言って呉服店に行く日をあらかじめ決めていた。共働きで長男は一人っ子。女性は午前9時から仕事だったが、「店は午前8時から開いているから大丈夫」と予定通りに家を出た。何事もなければ、仕事が終わる夕方、3人で自転車を買いに出かけるはずだった。事故は2人が出かけた直後、8時2分ごろに起きた。

長男は活発で、いろいろなことに興味を持っていた。ある日は将棋と速読、次の日はランニング、また次の日はサッカー、日が変われば今度はアート、さらにピアノ、英会話、スイミング…。多くの習い事に取り組んでいた。

「もう中学に上がるから、何かやめたら」と、女性が声をかけると、長男は「まだ続けたい」と答えたこともあったという。伸び伸びと、いろいろな経験を長男は吸収していった。

冬休み中、女性が仕事の昼休みに帰宅して、長男と食事したり、勉強を見たりしていた。息子の将来を誰よりも案じている妻の姿に夫も胸を打たれた。

「妻は(夫の自分より)20倍、30倍は息子に時間を費やしていた。息子の中学生活を本当に楽しみにしていた」と夫は淡々と語った。

事故のあった踏切は、女性が普段から利用していた。2021年12月に近くの踏切で起きた死亡事故には「なぜ事故が起きたんだろうね」と女性と話したこともある。夫も、普段通行していて不都合を感じたことはなかった。

なぜ列車が近づく中、線路に入ったのか。原因は分からないとしつつも、「家族は戻ってこないが、不幸な事故はこれ以上起きてほしくない」と夫は強く望んでいる。

9日午後1時、事故現場の踏切前には花や飲み物が供えられていた。警報器が鳴り響く中、静かに手を合わせる人の姿も見られた。

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