介護保険タクシー開業 茨城・鹿嶋の僧侶・岡部さん 「交通弱者救い社会貢献」

介護保険タクシーを開業した鹿嶋市の岡部悠大さん=同市宮中
介護保険タクシーを開業した鹿嶋市の岡部悠大さん=同市宮中


僧侶の修行を積んだ茨城県鹿嶋市宮中、岡部悠大さん(34)が、県内では珍しい「介護保険タクシー」を開業した。介護保険が適用されない福祉タクシーとは異なり、ベッドから車いすへの移乗も介助できる訪問介護支援事業所に当たる。首都圏では定着しつつあるものの、県内ではまだ普及途上。岡部さんは「できるだけ早く事業を拡大したい」と意気込んでいる。

岡部さんは曹洞宗の僧侶。日本で最も修行が厳しいとされる永平寺(福井県永平寺町)で4年間修行し、24歳で出家。僧侶として研さんを積みながら、生活のため運転代行業に従事したことを契機に、「交通弱者を1人でも救い、社会貢献したい」と考えるようになったという。

介護保険タクシーは、訪問介護事業所の扱いとなり、病院などへ通う際の「通院等乗降介助」(介護輸送サービス)に対応。介護保険適用のため1~3割負担と低運賃で利用可能だが、ケアプランへ盛り込まれることが必要となる。

岡部さんは昨年11月、NPO法人「はーとふる」を開所。日本政策金融公庫から融資を受け、車いす対応車両2台で事業を開始した。車いすでの階段移動や和室での車いす移乗などにも対応可能な「ベッドtoベッド」のサービスが基本。単独で行動できない人などを対象にした保険外の「ケア輸送サービス」、身体介護や生活支援のホームヘルプサービスも実施する。

首都圏からの移住者から「鹿嶋にも(介護保険タクシーが)やっとできた」との声も届けられたという岡部さん。事業運営に当たっては「重介護度の人は、自らの死を考える機会が多い」と語り、当事者のケアに、僧侶の経験を生かした傾聴にも取り組みたい考え。「利用者にとって、かけがえのない存在になれれば」と意欲を見せる。

今後も続くとみられる高齢者の増加に伴い、岡部さんは「介護保険は、これから訪問介護の時代に移る。介護保険タクシーの事業認可は手間がかかるだろうが、今後も増えていくのでは」と予測する。今後は採算性向上のため、潮来、神栖の2市にも事業拠点を開設したい考えだ。

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